突然の米朝首脳会談に意味はあった? 非核化交渉は再開で合意
アメリカのドナルド・トランプ大統領と北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)朝鮮労働党委員長が、朝鮮半島の軍事境界線にある板門店(パンムンジョム)で会談しました。2018年6月にシンガポールで行われた史上初の米朝首脳会談、今年2月にベトナム・ハノイで開かれた第2回会談に続く3回目の会談で、停滞していた非核化交渉の再開が合意されました。前日29日にトランプ大統領がツイッターで呼びかけて急展開を見せた今回の板門店会談。非核化をめぐってどのような話し合いが行われたと考えられるでしょうか。元外交官で平和外交研究所代表の美根慶樹氏に寄稿してもらいました。 【写真】非核化へ見えてきた米朝の距離とスタンス 第2回会談物別れ
トランプ氏には本当に会えるか不安も?
6月30日、トランプ大統領は板門店で金正恩委員長と電撃的に会合し、小一時間話し合いました。またトランプ氏は、短時間ではありましたが、米国の現職大統領として初めて南北の軍事境界線を越えて北朝鮮側に足を踏み入れました。 この面会は、トランプ大統領の個性的な働きかけにより実現したこと、ハノイにおける両首脳の2回目の会談以降、停滞していた北朝鮮の非核化交渉を再開させることに合意したこと、しかし同時に、来年の米大統領選挙を見据えてトランプ氏が米国内向けに行ったパフォーマンス的な側面があったことが注目されました。 説明の順序は少し変えますが、トランプ氏が金委員長に突然面会を呼びかけたことについては、G20大阪サミット後に韓国を訪問する機会を利用したこと、自らのイニシャチブであったこと、それに得意のツイッターで呼びかけたことなど、いかにもトランプ氏らしい行動でした。 金委員長が呼びかけに応じるかについて、会談後に同行の記者団から「何らかの合意があったのではないか」との質問も出ましたが、トランプ氏は「呼びかけは突然のことであり金委員長が応じない可能性もあった」と述べ、そうなったら自分は困った状況になっただろうとも発言しました。 私は、大阪での記者会見におけるトランプ大統領の発言を聞いて、多分会うことになるという感触を抱いているなと思いましたが、外交上の段取りとしても特殊な状況であり、最後まで確信を持てなかったとしても不思議ではありません。トランプ氏のこの「不安」はうわべだけの説明ではなかったと思います。