突然の米朝首脳会談に意味はあった? 非核化交渉は再開で合意
非核化“時間かかっても構わない”と説得?
前述の通り、トランプ氏は金委員長と会談する前後に、記者団に状況を説明し、若干の質問にも応じました。特に、オバマ大統領時代には北朝鮮による核とミサイルの実験が相次ぎ危険でひどい状況であったが、自らが大統領に就任した後、金氏はそれらを中止し、緊張は大幅に緩和されたことを複数回強調しました。トランプ氏は来年の大統領選挙を見据えて、あえてこのような発言を行ったのだと思います。 トランプ大統領は29日、金委員長に「2分間でも会おうと呼びかけた」と呼びかけていましたが、結局、50分余り会談しました。これだけの時間を使ったのであれば、かなり具体的なことを話せた可能性があります。 そして何より、トランプ大統領が強調したのは、今年2月にハノイで行われた首脳会談が物別れになって以来、膠着状態にあった非核化交渉を再開することで金委員長と合意したことでした。両首脳は交渉チームをあらためて立ち上げることになりました。米側はポンぺオ国務長官を中心に、ビーガン北朝鮮担当特別代表らが交渉を担当。交渉チームがどのような結果を出せる、あるいは出せないかを模索するそうです。トランプ氏は交渉チームの立ち上げに関して、2~3週間見守るとも言いました。
交渉の内容については、トランプ氏は「正しい道に沿って、包括的に交渉する。急ぐ必要はない」と強調したのが印象的でした。ハノイでも明確になったことですが、北朝鮮は「段階的非核化」しかできないという立場であるのに対し、米国はあくまで「包括的非核化」が必要だと主張しています。今回の板門店会談で、この両者の違いについてどこまで突っ込んだ話し合いが行われたか、詳細は分かりません。ただ会談後のトランプ氏の記者団に対する説明からは、今回の会談で、トランプ氏はあくまで「包括的非核化」が必要との立場を維持しつつ、「その実行には時間がかかっても構わない」という形で金氏を説得した姿がうかがわれます。 ハノイでは両者の主張がぶつかり合っただけでしたが、今回の会談では、トランプ氏は「包括的非核化」と「北朝鮮は時間をかけてよい」という2つのキーワードで説得し、これに対し、金委員長は同意こそしなかったとしても、そのような説得自体は受け入れた印象でした。そうであれば、今回の会談は非核化の実現のためにも一歩を進めたと評価できます。ともかく、これは推測の域を出ません。交渉チームの実務者による協議の進展に伴い、実情が明らかになってくることが期待されます。