瑠風輝をはじめ宙組がタカラヅカらしさを演出しつつ、「逆転裁判」の世界観を完全再現!
カプコンのゲームを舞台化したことで話題になった宙組公演「大逆転裁判」。 時は明治時代、駆け出しの弁護士・成歩堂龍ノ介(瑠風輝)が大英帝国・ロンドンの法廷にて、ある事件の弁護をすることに。彼をサポートするのが法務助士の御琴羽寿沙都(山吹ひばり)、あのシャーロック・ホームズ(鷹翔千空)も推理の手助けをする。 【写真を見る】 成歩堂と敵対する凄腕検事バロック・バンジークス(優希しおん)、大英帝国の首席判事ハート・ヴォルテックス(秋奈るい)、ホームズの相棒の天才少女アイリス・ワトソン(美星帆那)、事件の捜査を担当する刑事トバイアス・グレグソン(鳳城のあん)、日本からの留学生で事件に巻き込まれてしまう夏目漱石(凰海るの)、そして、成歩堂の盟友・亜双義一真(風色日向)など、ゲームでおなじみのキャラクターたちが登場する。 主人公の成歩堂龍ノ介を演じるのは、宙組男役スターの瑠風輝。ゲームと同じ黒の学ランをスタイリッシュに着こなし、「異議あり!」「待った!」「くらえ!」などおなじみのセリフを連発。ガックリした時に見せるユーモラスな表情も再現してくれる。そして、持ち前の歌唱力がいかんなく発揮される場面もある。成歩堂を献身的に支える寿沙都(山吹)にほのかな恋心を抱いている様子が描かれるのも微笑ましい。 衣装、髪型から仕草に至るまで、とにかくキャラクターの再現度が高い。やけに大袈裟な仕草が多いシャーロック・ホームズ(鷹翔)の一挙一動からも目が離せない。何かにつけて四字熟語を使いがちな夏目漱石(凰海)も四字熟語のたびにポーズを決める。検事席にて何故かワイングラスを傾ける検事バンジークス(優希)は、激昂するとグラスやボトルを投げるのだが、それも全て再現され、検事席の上での「踵落とし」までやってくれる。 幕開けにゲームのキャラクターが勢ぞろいするシーンから、テンションが上がる。証人への尋問、証拠を提示しての立証などが、耳馴染みのある音楽と共に、スピーディなテンポ感で進んでいく。ゲームで成歩堂とホームズとのコンビで行われる「論理と推理の実験劇場」も再現される。盟友、亜双義(風色)との絆が要所要所で描かれるのもゲームファンには嬉しい。 いっぽう、ストーリーはオリジナルである。バッキンガム宮殿で催される華やかな仮面舞踏会の席で事件が起こるという設定は、いかにもタカラヅカらしい。 事件の鍵を握るのがゼングファ共和国大使のブラッド・メニクソン(汝鳥伶)と、宮殿の執務長ニーナ・ジョーンズ(天彩峰里)だ。この2人はゲームには登場しないキャラクターだが、大使ブラッドが「ぐぐぐ...」と言ったり、証言台に立ったニーナが決定的な証拠を突きつけられた時、ショックのあまりくるくる回転したり、いかにもゲームに出てきそうな仕草をしてくれる。さらに証人としてヴィクトリア女王(小春乃さよ)までが証言台に立ち、事件の解決に向けて大活躍。飄々として愉快な女王陛下は、これまたゲームに出てきそうだ。 万国博覧会で賑わうロンドンの街の人々の姿や、スコットランドヤードの巡査たちの仕事ぶりを描くシーンが盛り込まれるのは舞台ならではの見どころだろう。 タカラヅカらしさを演出しつつ、ゲームの世界観を忠実に再現した瑠風輝らのこだわりを確認できる本作は見逃せない。 文=中本千晶
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