1つの作品から始まった“アート沼”。気鋭の日本人コレクターの心を捉えるものとは?
――起業家である高橋さんは、アーティストと自身の間に共通する側面を見出したこともコレクションを始めたきっかけと話しています。高橋さんのキャリアのお話を伺ってもいいですか? 「2004年に、いまで言うビッグデータの会社を立ち上げました。ビッグデータという言葉が本格的に使われはじめたのは2010年とか2011年とかなんです。なので2004年の立ち上げ時はビッグデータという言葉もなく、当時は『大量データの分析の会社なんですけど』と説明していました(笑)。 これからデータの時代が来るので、企業も日本もそれに備える必要がある。そんな思いから会社をつくったのですが、当時は、そんな話をしても周りはポカーンって感じだったんです。そうやってかなり時代を先取りして始めたので、サービスの価値をわかってもらうためには説明を尽くさなければならなかったので、ビッグデータのブームが来るまではすごく苦労しました。 そういう意味で言うと、僕も日本では先駆者的な立場だったんです。だから、その自分からすると、新しい美意識とか、これって新しいアートだよね、みたいに考えて作品を生み出している作家にはすごくシンパシーを感じています。起業家は自分のビジョンをビジネスに落として展開していくんですけど、アーティストはそれを作品に落として展開していくという共通点があるなと思っています。 ただ、アーティストの方がより孤独ですよね。ビジネスってお金になればうまくいっていると認められるし、実感もありますけど、アーティストはこの作品がいま認められなくても、将来まで含めて、自分が良いと思うものをつくり続けなければならない。起業家は稼げなければビジネスモデルを変えたりしますけど、アーティストは売れなかったからといってそうそうスタイルを変えるわけにいかないので。 あと、経営者をやっているとどんどん現場から離れちゃって、指示して組織を回すことが仕事になってしまうのですが、アーティストの、最後まで現場にいて、自分でものを作ることに関わらないとみたいな姿勢にはある種の羨ましさみたいなものも感じます」