消えていく博物館 文化の消滅を食い止める方法は
物価高騰やコロナ禍の影響で閉館する博物館や美術館が少なくない。なかでも「誰にも注目されずひっそりと閉館が進む状況」が水面下で進行していることを、一般社団法人、路上博物館は「サイレント閉館」と呼び危惧している。 文化庁の調べでは、博物館には国の法律に定められた条件を満たす登録博物館、それに準ずる指定施設(旧博物館相当施設)のほか、それらの指定を受けない博物館類似施設が2019年時点で5771館あった。これには、歴史博物館などのいわゆる博物館のほか、美術館、植物園、動物園、水族館など「有形及び無形の資料を研究、収集、保存、解釈し展示する施設」が含まれる。 路上博物館が行った調査では、2023年に閉館が報道された博物館の閉館数は22件、2024年は9月時点ですでに14件を数え、急激に増えていることがわかった。これらは報道機関によって伝えられたもので、サイレント閉館は含まれない。つまり、閉館した博物館の数はもっと多いはずだ。 博物館には、1館平均で約3万2000点の資料があるとのこと。単純計算では、2023年に閉館した22館の博物館が所蔵していた約70万もの貴重な資料が閲覧の機会を失ったことになると路上博物館は指摘している。 路上博物館は、「博物館はもっと面白い」というビジョンを掲げ2020年に設立。所蔵品の3Dモデル化(公式サイトで閲覧可能)など、博物館の社会的価値の向上に努めている。2020年に閉館した神奈川県の水族館、京急油壺マリンパークのバーチャル移転にも携わった。これから必要なのは、個々の博物館が行う「点」の取り組みではなく社会全体の仕組みとしての「面」の取り組みだと同法人の館長、森健人氏は言う。 そのため路上博物館では、サイレント閉館の実態調査と公表、展示物のデジタル化と公開、それらを支える寄付の募集(クラウドファンディング)を進めるということだ。
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