「国民に対する戦闘宣言だ」石破首相はなぜ権力にここまで執着するのか…世襲政治家としてのミッション
「権力乱用障害(PAD)」権力を保持するために他者に有害な行動をとる
こうした社会的な権力を得たり保持するために他者に有害な行動をとる者にみられる病理を「権力乱用障害(PAD)」という。『権力乱用障害』についての研究「病理学的存在としての『権力乱用障害』のケースを作る」(2017年)に、その特徴がある。 1.権力を手に入れ、保持することへの強い欲求 2.権力行使の開始、終結、またはレベルを制御することが困難 3.権力を失うことへの恐怖や不安から他の力への依存的行動をとる 4.効果を得るためにより大きな権力が必要になる 5.権力行使に偏り、他の楽しみや関心が減退 6.明らかな有害な結果を無視して権力行使を続ける 特別扱いをされることで脳の報酬系と関係する「ドーパミン系」が過剰に刺激され、最終的にはパフォーマンスに悪影響を与えるというわけだ。こうしたことは、国のトップだけでなく、サラリーマン経営者や組織のトップにもいえることだろう。権謀術数を用いて、人を批判し陥れ、能力がないままに、経営者になったものの、業績が悪くなる。悪くなるならやめればいい(自分自身が経営者になるまでは少しでも業績が悪くなると陰口を叩いた)のに、やめない。むしろ、クーデタをおそれて社員を招いての昼食会を開くというのは、傾いていく会社にならありがちな話だろう。 筆者は、石破首相を間近で接している存在ではないが、少なくとも、実現したい政策がない以上、首相の座にとどまる意味について、世間にうまく伝えることはできないであろうし、菅直人元首相のように、明らかにパフォーマンスを悪くしないか非常に心配である。
国民への「戦闘宣言」と受けとめたい
石破首相の近著『保守政治家』を編集し、熱心な石破応援団の1人であった倉重篤郎元毎日新聞論説委員長は、石破氏のインタビューでこう述べている。 <石破氏と言えば研鑽の人である。総理になれるかどうかは天命として、なった場合に備えた研鑽は誰よりも積んでいるように見える。今回も然り。ギリギリまで努力を続ける。その意味での「戦闘宣言」と受けとめた> このコメントの中で、<なった場合に備えた研鑽は誰よりも積んで>いなかったことだけは明白になったが、自分が首相の座にあるために、ギリギリまで努力を続けているのは確かであろう。そろそろ石破首相のかねてからの持論である「防衛増税」の議論が始まるころだ。国民への「戦闘宣言」と受けとめたい。
小倉健一