男子バレーはリオ五輪出場権を得るために逆襲できるか? 山本隆弘氏に聞く
――石川のスパイク決定率は高いが。 「石川は、ワールドカップと違って被ブロック率が高まっている。あれだけの結果を残したのだから、当然、マークはされる。彼自身がそこをどう打破して乗り越えていくかだが、初戦では低かったスパイクのネット通過点を中国戦では高くするような工夫は見られた」 ――トスワークは? 「セッターの深津は、うまくミドルの攻撃を使っている。決定率も高い。ワールドカップでは勇気を持って使うことができていなかったが、今大会ではその反省を生かしている。大きな成長点。あそこを使っていかないとサイドの攻撃も厳しくなる」 ――ディフェンスは? 「中国は、真ん中の攻撃が多いというデータが上がっていて、そのマークに最初から最後まで振り回された。実際は真ん中の攻撃が少なく、レフト攻撃の方が多かったが、どこかでデータを捨てきれずにブロックの的も絞りきることができなかった。ブロックでオプションをかけるところまで行かなかった。 例えば、サーブでレフトを潰せば、真ん中とライトの攻撃しかなくなる。そこにオプションをかけてブロックの枚数を増やすこともできる。高さがない分、そういうトータルディフェンスが、日本の対抗手段なのだが、サーブが効かないので相手の攻撃枚数を減らすことができていなかった」 ――今後、どうチームを立て直す? 「中国戦で、すべての膿を出しきったと思う。ストレート負けの方が、フルセットで体力面、心理面でダメージを得るよりも切り替えやすい。今日、練習を見てきたが、雰囲気は良かった。4年前にOQTを経験した清水、富松、米山、永野らのベテランは『OQTの戦いには、こういうこともあるんだ。これで終わったわけじゃない。上も混戦。まだ5試合もある。まずはここからの3連戦を勝っていけば可能性はあるんだ!』という話をチーム内でしたという。 キャプテンの清水が、責任を背負い込みすぎているのが気になるが、もっと楽にプレーすればいいし、悔しさを知っているメンバーが精神的支柱にならないと五輪への扉は開けない。 女子もタイ戦ではロンドン五輪の銅メダル組の活躍で流れを変えた。8年前に北京五輪を決めたOQTもイタリアに負けたことで『悔いを残さずやるべきことをやりきろう』と開き直ってから6連勝した。石川や柳田ら若い選手は、この大会の怖さを知ったと思う。萎縮せずに開き直って思い切りプレーをすればいい。1点、1点、取られても取っても納得のいくプレーすることが大切。それが団結につながり、チームの進化、結果につながる」 ――具体的には? 「16本のサーブミスをメディアに叩かれているが、サーブにしか突破口はない。ターゲットを絞り、意図のあるサーブを狙うこと。サーブに意図があればネットを越えるだけでプレッシャーがかかる。相手に『狙われているな。横もケアしなきゃ、前もあるかも』と意識させるだけで、堅さにつながり反応が鈍くなり、最初の一歩が遅れて動けなくなる。それが、時速100キロを超えるような強烈なジャンピングサーブとなれば、なおさらプレッシャーはきつくなり、イン、アウトのジャッジだけでも神経を使う。バレーとは、そういう心理戦なのだ。そういう意図のあるプレッシャーをかけ続けておけば、100パーセントのフルパワーで打たなくともビッグサーブが生まれる」