ロッキード・マーティンが自衛隊に狙う次の一手
海自護衛艦では、ヘリコプター搭載護衛艦(DDH)のひえいが36年4カ月の最長の就役期間を記録したので、こんごう型の寿命は確実に迫っている。 2022年12月に閣議決定された防衛力整備計画の別表3(おおむね10年後)には、イージス艦が10隻整備されることになっており、現有の8隻より2隻増える。 防衛省は8月末、2025年度防衛予算の概算要求で、こんごう型イージス艦の除籍に伴う後継艦などを検討するための技術調査費用として33億円を計上した。
DDG(X)と呼ばれるこの後継艦には、SPY6が採用されるのか、SPY7が採用されるのか。SPY6はアメリカ海軍で2033年までに7艦種(DDGフライトⅢ、DDGフライトⅡA、CVN-74型、CVN-79型、LHA-8型、LPD-29型、FFG-62型)の65隻に搭載される見込みだ。 今後のアメリカ海軍との相互運用性を考慮すれば、たとえすでにイージスシステム搭載艦でSPY7を採用したとしてもSPY6のほうがよいのではないかとの意見も根強い。
これに対し、LMは「SPY7レーダーが他のSPYレーダーシステムと完全に相互運用可能であり、統合防空ミサイル防衛(IAMD)機能を提供する」と訴える。 ■導入コスト膨張への懸念 さらに、ASEVのコスト膨張の懸念も高まっている。現在、防衛省の試算では、ASEV2隻分の取得経費は7839億円(1隻当たり約3920億円)に及ぶ。 導入を決定した2020年当時に防衛省が想定していた「1隻当たり2400億円~2500億円以上」と比べ、約1.6倍も増えている。防衛省は円安や物価高の影響などを理由に挙げている。このうち、SPY7の取得契約額は約350億円、イージスシステムが約1382億円となっている。
財務省も2023年10月、ASEVのコスト膨張への懸念を示した。「日本が搭載予定のSPY7レーダーは、地上固定式レーダーとしてはアメリカで導入実績があるものの、艦載用としては例がない(スペイン及びカナダはSPY7艦載を計画中であるが、弾道ミサイル迎撃用ではない)ため比較が困難」と指摘する。 「今後多数調達が見込まれるアメリカの次期イージス艦は、別のSPY6レーダーを採用予定であるため、SPY7レーダーの補用品や本体価格にはスケールメリットが働きにくい」と警鐘を鳴らした。