ロッキード・マーティンが自衛隊に狙う次の一手
具体的にはレーダーの基礎となるビルディング・ブロックのサブアレイ・スイート(SAS)のこと。ASEV向けのSPY7は328個のSASからなるアクティブ・アクティブ・フェーズド・アレイ・レーダー(複数のアンテナ素子を規則的に配するアレイアンテナを用いたレーダー)となっている。 1つのSASは、ちょうど机の引き出しを縦にしたような長方形の箱ほどの大きさ。筆者は実物を持ったが、10キログラム超のずしりとした重さがあった。
LMは、このSASの数を調整することによって、あらゆる任務に合わせて拡張可能だと説明した。裏を返せば、SPY7はこのスケーラビリティー(拡張性)を売り物にしてレーダーの派生型を広げている。 ASEVに搭載されるSPY7レーダーの正式名称はAN/SPY-7(V)1レーダー。VはVariant(派生)の頭文字だ。その派生モデルとして、スペイン海軍の新型F-110型(ボニファス級フリゲート)に搭載するAN/SPY-7(V)2とカナダ海軍の次期水上戦闘艦CSC(リバー級駆逐艦)に搭載するAN/SPY-7(V)3がある。
LMは、日本のASEVも、アメリカのLRDRも、スペインのF-110型も、カナダのリバー級駆逐艦もすべて、SPY7が発する電波の周波数が無線LANなどに使われるSバンド(2ギガ~4ギガヘルツ)であると説明。さらにこれらのすべてのプログラムが共通のSASを使用していると強調した。 LMは「日米加西の4カ国は、SPY7という共通製品へのアプローチによってコスト削減のための恩恵を受ける」とアピールした。
■海自イージス艦の後継 LMがここまでしてSPY7レーダーの高性能や拡張性をアピールするのには理由がある。それが2番目の大きなポイントだ。退役時期が迫るこんごう型イージス艦の後継艦に、アメリカ・RTX(旧レイセオン・テクノロジーズ)のSPY6レーダーか、あるいはLMのSPY7レーダーのどちらが採用されるかに注目が集まっているからだ。両社にとってここ1、2年が売り込みの山場となろう。 海自は現在、こんごう型4隻、あたご型2隻、まや型2隻の計8隻のイージス艦を有している。こんごう型1番艦のこんごうは2024年3月ですでに艦齢が31年、2番艦のきりしまが29年、3番艦のみょうこうが28年、4番艦ちょうかいが26年に達している。