朝ドラ「おむすび」をそれでも私が見続ける理由…大阪制作としてのコメディとリアリティを
■それでも諦めきれない理由 それでも諦めきれないのは『カーネーション』や『ちりとてちん』(2007年)、『スカーレット』(2019年)に見入った「NHK大阪制作朝ドラ」ファン(私)としての性かもしれない。また「国語算数理科社会オール3」=まだ決定的な赤点を取っていないという印象もあるからだ。 諦めきれない理由として、まずは、何といっても橋本環奈の演技力である。10月21日放送、「私はお姉ちゃんみたいな生き方が嫌なの!」と、姉役の仲里依紗に対してまくし立てたシーンは、緩かったドラマの空気が、グッと止まるのを感じた。
とにかく安心して見ていられる。背景にあるのは、橋本環奈が持つ芸能運動神経の高さだろう。 そして「糸島編」ではみりちゃむ、「神戸編」では「神戸栄養専門学校」で橋本環奈の同級生を演じる平祐奈が良いことも、諦める気持ちを萎えさせる。 また、麻生久美子演じる、いい意味で鷹揚な母親がとにかくいい。ただ残念なのは、母親に対して、北村有起哉演じる父親の狭量さに共感しにくいところ……。 ■まだ何が起こるかわからない
そもそも大阪制作朝ドラには何が起こるかわからない。 最初から最後まで高値安定だった『カーネーション』は別格として、川栄李奈が出てきて、後半一気にスパートした『カムカムエヴリバディ』や、逆に、前半が劇的に盛り上がりながらも、戦禍の恋愛パートでダレてしまった『ブギウギ』(2023年)など、何が起こるかわからないのだ。 というわけで、ここからは、見続けると覚悟を決めた上で(よく出来た12月2日放送分で覚悟はさらに固まった)、「もっと、こうなったら盛り上がるのに」という期待を述べておきたい。
1つ目は「もっとコメディを」という期待だ。そもそも大阪制作である。もっとドタバタガヤガヤピョンピョンと、弾けてくれればいいのにと思う。何せ、仲里依紗、橋本環奈、キムラ緑子が揃っているのだ。 仲里依紗は何といっても今年の『不適切にもほどがある!』。同じく宮藤官九郎脚本のNetflix『離婚しようよ』(2023年)でも冴えていて、今や「宮藤官九郎ドラマの女王」の風格さえ漂う。『おむすび』でのパンチの弱い使われ方は、さすがにもったいない。