30年以上の憧れを実現! ドラマの劇中車に一目惚れしたSR311フェアレディ2000!【ヒストリックカーヘリテイジカーミーティングTTCMin 足利】
若い頃や幼い頃に見て憧れたクルマは、誰しも1台や2台あるのではないだろうか。果たして憧れた気持ちを抱き続け現実のものにすることは並大抵ではないだろう。10代の頃にテレビドラマで見て以来、憧れを抱き続け定年後に実現させた人を紹介しよう。 【写真】SR311フェアレディZの詳細を見る PHOTO&REPORT●増田 満(MASUDA Mitsuru) とかく経営不振が話題になる日産自動車だが、一貫してスポーツカーを生産し続けている稀有な自動車メーカーでもある。1952年に戦前型ダットサンのシャーシやエンジンを用いて国内で初めてとなるスポーツカー、ダットサン・スポーツDC-3を発売している。その後途中で何度か途切れたこともあるが、現行型フェアレディZまで一貫してスポーツカーを作り続けている。DC-3の後に国内では1960年にダットサン・フェアレデーを発売。さらに62年には310ブルーバードのコンポーネンツを利用してSP310ダットサン・フェアレディ1500を発売する。 このSP310は後部座席として横向きに座る3シーターであることが特徴だった。さらにSP310のエンジンを1.5リッターから1.6リッターへ拡大してクーペボディを被せた初代シルビアも生まれた。この初代シルビア発売後に本家のフェアレディもエンジンを1.6リッターとしたSP311フェアレディ1600に発展している。 続けて67年にはセドリックなどに搭載されていた2リッター4気筒エンジンであるU20型を搭載するSR311フェアレディ2000を発売。しばらくはSP311フェアレディ1600と併売された。もともとスポーツカーとしての資質に優れレースでも活躍していたことから、最強のフェアレディとして大人気になった。このSR311は最高速度が205km/hと謳われるほどの高性能ぶり。この時代に主要輸出先であるアメリカの安全基準に準じるため、フロントウインドーの高さを変更している。それ以前のものはローウインドーと呼ばれ、スタイルを重視する層に支持された。 以来、1970年に生産を終了するまでの長きに渡りダットサン・フェアレディは発売された。SR311の発売当時の新車価格は88万円で、その後に発売されたトヨタ2000GTやマツダ・コスモスポーツなどより買いやすい設定だった。対米輸出も好調だったことから、比較的残存数の多いスポーツカーと呼べる。また新車時から多くのテレビドラマで劇中車として採用された。今回紹介するSR311オーナーの下山孝さんもテレビドラマで見てSR311に惚れてしまった人だ。 現在71歳の下山さんが15歳だった頃、『ある日わたしは』や『キイハンター』などに登場するSR311を見て一目惚れ。以来いつかは買うと心に決めた。その後に運転免許を取得して夢を実現させたのかと思えば、そうではなかった。なんと、夢を叶えられたのは17年前のこと。下山さんが54歳の時であり、実に40年近くも憧れ続けてきた。こうした古いクルマを手に入れるにはさまざまなハードルがある。家庭の事情だったり良い出会いに恵まれなかったりと、人それぞれに事情があるはず。ただ、憧れた期間が長ければ長いほど、現実のものにした時の喜びは大きいはずだ。 下山さんが買ったSR311は調子が良くなく、思い切ってフレームからボディを分離するレストアを決行することにした。ただ、そこまで大掛かりなレストアとなると予算もそうだが時間がかかる。長期間SR311に乗ることができないのはストレスにすらなる。そこで下山さんはさらに思い切った行動に出る。なんとSR311をもう1台買い足してしまうのだ。 2台も同じクルマを所有することは、いわゆる旧車マニアだと珍しいことではない。ただ、同じクルマを複数楽しむなら1台はノーマルでもう1台はチューニングしたりカスタムして楽しむ人も多い。案の定、下山さんも今回紹介する個体には手を加えていた。エンジンをオーバーホールするついでにハイコンプピストンを組み込んだのだ。さらに吸排気系を見直しキャブレターを高性能キャブの代名詞であるウエーバー48DCOEへ変更する。実に「180psくらい出てます」というからノーマルの145psから大幅なパワーアップを果たした。 そこで足元にも手を加える。レース用サスペンションを組み込んで車高をダウンさせつつ、8スポークのアルミホイールを履かせた。さらにフロントブレーキにはMk63という日産のスポーツオプションパーツとして人気の4ポットキャリパーに変更している。そもそもはプレジデント用だったキャリパーだが、70年代の日産車オーナーが幅広く使うことになる人気のパーツだ。 最初に買った個体は現在、レストアが完了して2台のSR311がガレージに並んでいるという。どちらも交互に乗って調子を維持しているそうだが、やはり古いクルマなのでトラブルになったこともある。お住まいの群馬県から長野県の上田市まで遊びに行った時、セルモーターが回らなくなった。壊れたのかと思いきや、木の棒で何度か叩くと復活。接触不良だったようで、旧車あるある。 今回のようなイベントに展示することも多いが、ある時ボンネットを開けて展示していたら何者かにエンジンを触られた。帰ろうとエンジンを始動すると、なんとガソリンが漏れてしまったとか。不特定多数が来場するイベントに展示するのであれば、やはり絶えず見える場所にいることや、クルマから離れる時にはキーをロックしてボンネットを閉めるなど注意が必要。同じ好きもの同士なのに少々悲しいエピソードを聞いてしまった。
増田満
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