日本球界の危機?「“野球”が上手い選手が減った」と危惧する指導者 地上波でプロ野球の放送が減少したことも一因か
昨今の指導法や選手育成に“違和感”
筆者も現場で取材していると、以前と比べて、野球についての知識が乏しい選手が多いと感じることがある。 ただその一方で、細かい部分にばかりこだわり過ぎている指導にも問題があるという。少年野球の現場を取材した時に、ベテランの指導者はこんなことを話していた。 「小学生のチームで勝とうとするのであれば、ひたすら細かいプレーを練習するのが近道なんですね。バッテリーは守備が不安定ですから、その穴を突くような小技を仕掛ければ点が取りやすい。背の小さい子どもには『バットを振らなくていいから四球で出塁することだけを狙え』と言っているようなケースもあります。守備でも牽制球や挟殺プレーを練習して、相手の走塁ミスでアウトをとる。それでも、勝てばうれしいのかもしれませんが、選手の先々を考えると基本的なプレーの部分をしっかり指導する方に時間を割く方が少年野球の指導としては適切ではないでしょうか」 高校野球や大学野球でも勝ちを重視するあまり、選手の将来を考えない指導が問題視されることがあるが、下の世代でも行き過ぎた指導はいまだに残っている。野球の実戦的なプレーや知識を向上させたいという意図があったとしても、このような指導が是とされることもまた問題である。 侍ジャパンのトップチームは東京五輪、WBCで優勝を果たし、今年は育成年代がU15W杯を制するなど国際大会の場で日本の野球が力を発揮していることは確かである。しかし、大きく環境が変化しているからこそ、改めて、カテゴリーの垣根を越えて、指導法や選手育成を考えていく必要があるのではないだろうか。 西尾典文(にしお・のりふみ) 野球ライター。愛知県出身。1979年生まれ。筑波大学大学院で野球の動作解析について研究。主に高校野球、大学野球、社会人野球を中心に年間300試合以上を現場で取材し、執筆活動を行う。ドラフト情報を研究する団体「プロアマ野球研究所(PABBlab)」主任研究員。 デイリー新潮編集部
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