「結果的に見込み違いだった」横浜F・マリノス社長が明かすキューウェル監督の電撃解任の理由
ホームの日産スタジアムで敗れ、その時点で連敗となった6月29日のヴェルディ戦後には、ブーイングを浴びせたファン・サポーターに激怒する異例の光景も見られた。審判への批判も合わせてクラブ側から注意を受けた後は改善され、中山社長も一連の感情的な立ち居振る舞いと今回の契約解除は関係ないと強調した。 ただ、現役引退後は指導者の道を歩むも、イングランドの4部または5部にあたるリーグのクラブで、就任から数カ月と短期間で解任されたケースも目立つ。マリノスの監督に就任する前はスコットランドリーグの名門セルティックのコーチを務め、日本代表FW前田大然(26)らの指導にあたっていた。 マリノスでは中盤の形を、それまでのダブルボランチを置く正三角形型からアンカーを置く逆三角形型にスイッチ。攻撃に人数をかけるスタイルに挑むも、アンカーの両脇に広がるスペースを突いてくる相手に対応できないケースが続いた。23試合を終えた段階での総失点36は、総得点35を上回っている。 マリノスが志向してきたアタッキングフットボールを継承し、さらに新たなエッセンスを加えようとしていたと中山社長はキューウェル監督をねぎらう。それでも戦術の浸透度を問われると、こんな言葉を残している。 「戦術を細かく落とし切れていなかった。スーパースターの彼ならば簡単にできるプレーが、選手たちにはうまく伝わらなかったところもあった」 こうした積み重ねが、強化の最高責任者であるスポーツダイレクターを兼任する同社長をして、アタッキングフットボールが「できていない」と言わしめるにいたった。報道陣からは「ここまでの経緯や結果を見れば、ちょっと見込み違いだったとなるのか」とキューウェル監督の手腕を問う質問も飛んだ。 中山社長は慎重に言葉を選びながら、こんな言葉を返している。 「12位という順位をよしとしないわれわれがいるので、結果的にそうです」 今後はハッチンソン・ヘッドコーチが暫定的に指揮を執る。キューウェル監督のもとでも実施的な練習メニューを作成していたオーストラリア出身の暫定監督は、アンジェ・ポステコグルー監督(58、現トッテナム・ホットスパー監督)が夏まで指揮を執った2021シーズンもマリノスのヘッドコーチを務めている。 マリノスに15年ぶりとなる2019シーズンのJ1リーグ優勝をもたらした、ポステコグルー路線の復活および継承という意味合いも込められている。しかし、あくまでも暫定であり、今後に関してはCFGの意向もあると中山社長はこう続ける。 「当然、彼ら(CFG)も動いているので、彼らのタイミングを見つつ、ジョンの体制でどれだけアタッキングフットボールを取り戻せるか。それも合わせての検討になる」 中山社長によれば、CFGの意向は強制力を伴わないという。トップチームでの指導経験が浅かったキューウェル監督の招聘に関しても、提示されたリストからマリノス側が最終的に選択した。その意味では、経営面のトップである同社長が強化の最高責任者を兼任する現在の体制も、早急に見直す必要性が出てくる。 20日の次節では、首位を快走する町田と国立競技場で対戦する。その後は中断期間に入るため、指導体制を正式に定め、戦力を再構築するうえでは最初で最後のチャンスになるだろう。今シーズンの目標を上位進出と、2025-26シーズンのACL出場権獲得に定めたマリノスの前には、解決すべき課題がピッチの内外で山積している。 (文責・藤江直人/スポーツライター)