2025年大胆予想!トヨタが業界再編に参戦、スズキの持ち分法適用会社化も…ホンダ・日産だけではない生存競争が激化
■ スズキはトヨタに2度助けられた 修氏はいずれ鬼籍に入ることを悟り、今の盤石なスズキの経営を崩さず、発展させるためにはトヨタとの協力関係をさらに強化することが最善策の一つと見ていたのであろう。トヨタ側にも修氏が存命中には遠慮のようなものがあったが、これから両社はさらに歩み寄るのは間違いない。 俊宏氏は15年に社長に就任しているので、25年に就任丸10年となる。修氏退任後に空席となっている会長に就いても年齢的に不思議ではない。 後任の社長には、石井氏が昇格する線が有力と見られる。それを契機にトヨタはスズキへの出資比率を高めるのではないか。 歴史的に見てもトヨタとスズキの関係は深い。 スズキは初代社長の鈴木道雄氏が1909(明治42)年、現在の浜松市内に鈴木式織機製作所を設立したことが原点。トヨタグループの始祖、豊田佐吉氏も浜松市に隣接する湖西市出身で自動織機の開発・販売で財を成し、それが自動車進出の原動力となった。創業家が同郷で、織機から自動車産業に繋がる点も共通する。 1950年、スズキでは資金繰りに窮して大規模な労働争議が発生した際に豊田自動織機に融資を依頼したことがある。1975年には、スズキの2サイクルエンジンが排ガス規制をクリアできず、専務だった修氏は、当時トヨタ社長の豊田英二氏に頭を下げ、軽の競合相手であるトヨタグループのダイハツ工業からエンジン供給を受けた。 スズキは2度トヨタに助けてもらっている。
■ クルマの「スマホ化」に危機感 24年12月23日には日産とホンダが経営統合交渉に入ることを発表した。この統合スキームに三菱自動車も加わることを検討しており、「3社連合」ができれば、「非トヨタグループ」の自動車連合ができる。 一方で、スズキに加えて、同じくトヨタが出資するマツダやいすゞ、すでに持ち分法適用会社となっているSUBARUを含めて「広義のトヨタグループ」ができている。トヨタのスズキへの出資比率が高まれば、「広義のトヨタグループ」の結束もさらに高まるだろう。 25年はトヨタとスズキの関係が深まることを筆者は予想するが、同時にトヨタ自身も「変身の年」だと見ている。 コロナ禍にあっても安定した業績を出し、経営基盤は今のところ盤石だが、自動車の「スマートフォン化」に代表されるような産業界の大きな変化についてトヨタは危機感を抱いている。時代の流れに合わせてトヨタ自身が大きく組織を変えてくるのではないか。 トヨタは持ち株会社への移行や、グループ企業の再編などを検討していると見られる。25年は、日本の自動車産業で、生き残りをかけたダイナミックな動きが見られるに違いない。 井上 久男(いのうえ・ひさお)ジャーナリスト 1964年生まれ。88年九州大卒業後、大手電機メーカーに入社。 92年に朝日新聞社に移り、経済記者として主に自動車や電機を担当。 2004年、朝日新聞を退社し、2005年、大阪市立大学修士課程(ベンチャー論)修了。現在はフリーの経済ジャーナリストとして自動車産業を中心とした企業取材のほか、経済安全保障の取材に力を入れている。 主な著書に『日産vs.ゴーン 支配と暗闘の20年』(文春新書)、『自動車会社が消える日』(同)、『メイド イン ジャパン驕りの代償』(NHK出版)、『中国発見えない侵略! サイバースパイが日本を破壊する』(ビジネス社)など。
井上 久男