奈緒&松田龍平が夜の街に映える 『東京サラダボウル』が描く、現代日本の国際化の裏側
ふと人の会話に耳を澄ますと、日本語以外の言語も頻繁に聞こえてくる現代の東京。1月7日に始まった『東京サラダボウル』(NHK総合)でも様々な言語が行き交い、字幕が多用されている。母国語のドラマだと、どうしても耳に頼って、ながら見してしまうことが多い。だが、スマホも何も持たず、約45分間、画面に集中して物語に没頭するのもいいなぁと改めて実感させられた。 【写真】“レタス頭”に変身した奈緒 『クロサギ』の作者として知られる黒丸の新作をドラマ化した本作は、国際捜査の警察官・鴻田(奈緒)と警視庁の中国語通訳人・有木野(松田龍平)の異色コンビが難事件に挑む物語だ。 第1話では、中国人留学生のシェン(許莉廷)を訪ね、日本にやってきた友人のキャンディー(喬湲媛)が突如失踪。有木野が偶然知り合った鴻田のペースに巻き込まれる形で、二人は本名もわからないキャンディーの行方を追う。 何よりも目を奪われたのは、“レタス頭”と呼ばれる鴻田の髪だ。鮮やかな緑に染まったその髪は東京・新宿のネオン街でもよく目立つ。たくさんの野菜が入ったサラダボウルも彩り豊かで、互いの個性をちっとも打ち消し合っていない。 同じように、多様な人種や民族で構成されたアメリカ社会を表す言葉として、以前は「人種のるつぼ」が使われていたが、近年は「人種のサラダボウル」が用いられることの方が多いという。それぞれの文化が混ざり、一つに溶け合う「るつぼ」ではなく、一つひとつが独立したまま、共存する「サラダボウル」。新型コロナの流行も落ち着き、再び外国人旅行客はもちろん、技能実習生や留学生が増えている東京も「サラダボウル」になりつつある。 そんな中で、メディア報道で目立つようになってきたのが、「外国人犯罪」という言葉だ。外国人による犯罪が存在しないわけではない。だが、殊更、外国人であることを強調するその言葉が差別や偏見を生んでおり、SNSでは人種で一括りにし、糾弾する投稿も頻繁に見かける。 警察官を辞め、外国人が事件や事故に巻き込まれた時に、警察官や弁護人との橋渡しになる警察通訳人に転身した有木野も厳しい現実を目の当たりにしてきたのだろう。「どんなに被疑者に寄り添おうとしても、彼らは必ず嘘をつく。全員が同情すべき相手じゃない。それに警察官にだって、クズはいる」と零す。でも、だからこそ、東京に居住する外国人約68万人の暮らしや人生にフラットな視点で向き合おうとするのが鴻田だ。