「こんなに夫がなにもしない人だったなんて…!」“溝”が深まっていく夫婦が見落としていること
家族像を「わたしたち向け」にカスタマイズする
「家族像」をアンラーンする。それがこの章のメインテーマです。 アンラーンとは、学びほぐしと訳され、これまで身につけた思い込みや価値観を取り除き、新たな知識や価値観を取り入れやすくすることです。自分の価値観を変えていくことは時間もかかりますし、目に見えて変化がわかるものでもありません。だから、焦らずゆっくりいきましょう。 「家族観の違いの溝」を埋めるための手順は、次の3ステップです。 (1)知る:自分やパートナーの持っている家族像、社会の様々な家族像を知る (2)違いを受け入れる:お互いの家族観や習慣の違いをむやみに否定しない (3)「わたしたちの文化」をつくる:共通のビジョンを持つ 相手を自分の常識に合わせて変えていくのは、非常に難しいことです。かといって、自分が相手の価値観にすべてを合わせるのも無理なことでしょう。だから、片方に合わせるのではなく「わたしたち家族の常識」を新たにカスタマイズしていきます。 家族観をつくっていく前に、少しだけ時代の変化についてお話しします。 今、時代はかつてないほどのスピードで変化しています。それにともなって、「家庭像の価値観」も僕たちの親世代とはまったく違うものになっています。 たとえば、かつて頑なに信じられていた「3歳児神話」(子どもが3歳になるまでは母親が子育てに専念すべきという考え方)は合理的な根拠がないというのが現代の定説。3歳までの育児がとても大事なことは認めつつ、それを担うのが母親でなくてはならない理由はべつにありません。当然、父親だって構わないわけです。 他にも、「男たるもの、しっかり稼いで家族を養うべし」というのも、もはや昭和のマッチョ思考だと思いませんか? これは「大黒柱プレッシャー」と言われ、男性の生きづらさの原因のひとつとされています。 「男性が育休を取って何するの?」と言われていた時代は終わりました。令和3年6月には育児介護休業法の改正が行われ、企業は男女問わず育休の周知をしなくてはならなくなり、男性も産休期間(子の生後8週間に取得する休業)の休業取得が充実するなど、男性も育児を担えるようになろう、と社会の価値観は変わってきています。 こうした価値観の変化の背景には、社会の変化があります。僕が産まれた1980年は、専業家庭世帯が圧倒的多数(※専業世帯1114万世帯:共働き世帯614万世帯)。まさに「男性は外で仕事、女性は家で家事育児」という役割分担を前提にした社会だったと言えます。 今やこの世帯数は逆転し、令和元年の共働き世帯は1245万世帯、専業世帯は582万世帯です。にもかかわらず、まだまだ無意識のうちに女性は「良妻賢母」が、男性は「大黒柱」と、性別役割を当てはめているかもしれません。 もう一度言います。「家庭像の価値観」は僕たちの親世代と僕たちの世代で、置かれている環境がまったく違っているのです。 自分が育った家庭像は、その当時の価値観でつくられたものです。自分が「当たり前」と思っていることが、これからの自分たちにとって本当に「当たり前」でいいのか。 まずは、自分の中にある「家庭像のバイアス」に意識を向けてみることがとても大切です。