硬グミ「忍者めし 鉄の鎧」が異例の連続“完売” 「次の販売は?」
ただの硬さ競争に終止符
ここからはヒットの要因を1つずつ解説していこう。まず押さえるべきは、グミそのものの硬さだ。先述の通り、忍者めしブランドはハードグミカテゴリーに入り、しっかりとした食感を売りにしているが、鉄の鎧はグミを分厚くすることでその食感をさらに硬くしている。 簡単にかみきれない弾力は、既存のハードグミに慣れた消費者を十分に満足させるものだ。現在、グミ市場が膨張し続ける背景にあるのはハードグミ好きの存在で、そんな彼ら彼女らが飛びついたのは間違いない。 ただ、それだけではこの異例のヒットを説明できない。この急成長市場には硬さを売りにする競合がいくつもあり、また、消費者の側にも“もっと硬いものを求めるインフレ現象”が起きていて、硬さ一辺倒ではすぐに飽きられるからだ。 そこで2つ目の要因だ。この鉄の鎧はグミの周囲を糖衣でコーティングしており、口の中でかんでまず感じるのは、実はざくっとした食感。歯が糖衣を砕いたときの歯触りは既存のグミにはない独特の心地よいクランチ感で、これが消費者に受けた。 そして特筆すべきは、このクランチ感があることで、その後にかむグミ自体の硬さが強調される点だ。満足度は一層高まる上、これまでにない“異質”の2つの食感を立て続けに味わえる仕掛けはくせになる。ハードグミ好きの枠を超えて、グミ好き・お菓子好きの心をつかんだと言える。 なお、この糖衣コーティングには同社の「e-maのど飴」に使う技術を生かしている。e-ma のど飴も一般的なあめやタブレットと異なり、独特のかりっとした軽い食感が特徴だ。 ハードグミに新食感も加えるというアイデアは、糖衣コーティングを知り尽くしたUHA味覚糖だから生まれた発想とも言える。外側のコーティングと内側の硬くて分厚いグミを組み合わせ、全体としてのグミの硬さを極限まで強調した。
再々販の予定は?
そして3つ目のヒット要因は、グミの硬さが期せずしてもたらした。それは、再販まで4カ月も要したことによる「飢餓感」だ。 まずは、なぜこれほど長い期間を要したのかだが、忍者めし担当者はハードグミ特有の製造工程が大きく関係していると説明。「グミに硬さや分厚さをもたせるには、乾燥時間が通常のグミよりも2倍、3倍と長くかかる。また乾燥スペースを鉄の鎧だけで長期間、占拠するのは生産面で難しいという問題もあり、生産量をすぐに増やすことができない」 また、品薄状態になるのを防ぐため発売時の2倍の量を確保したことも、再販までに時間がかかった要因だ。 しかし、それでも1週間ほどで売り切れた。 この4カ月は消費者にとっても、同社にとっても、もどかしい期間だったが、結果的に鉄の鎧の認知度を一層上げて、グミ好きを含む消費者の中に強烈な飢餓感を生み出した。「TikTokなどで鉄の鎧の食感を取り上げてもらい、話題になった。当社が予測していないかたちでのバズり方で、とても驚いた」(忍者めしブランド担当者) こうして認知度を高めた鉄の鎧はその希少性もあり、さらに関連動画がSNSで繰り返し再生されることに。そして23年発売当時の第一波に乗れなかった消費者も知るところとなったのだ。 鉄の鎧は手に入りにくい状況が続くが、今後、改善の見込みはあるか。この気になる疑問に対して、忍者めし担当者は「現在、24年秋の再々販に向けて準備中」と説明。グレープ味の評判を受けて新味の開発を予定していたが、いったんストップさせて、生産量の確保に全力を注ぐという。
半澤 則吉