殺人を犯しても生き続けられる“無期懲役刑”…「本当はこの手で殺してやりたい」苦しみ続ける遺族
●事件解決まで13年半、続いた苦痛と焦り
事件は長い間、未解決だった。命日を迎えるたびに強まる苦痛と焦り。 そんな年を12回も繰り返していた2018年4月、突如、被疑者逮捕の一報が入った。 のちに無期懲役が確定した鹿嶋学受刑者(事件当時21歳)は、聡美さんを強姦しようと家に侵入し、抵抗されたためナイフで何度も刺して殺害。姿を見られた聡美さんの祖母も刺し、その場に居合わせた妹にも手をかけようとした。 犯行の直前、寝坊による遅刻で勤務先の会社に行くのが嫌になって逃げ出し、住んでいた山口県から東京方面に向けて原付バイクを走らせていた。その際に下校中だった聡美さんを偶然見かけて狙ったのだった。 事件後に逃走し、14年近くの間、自首することなく生活していたが、別の暴行事件で取り調べを受けた際にDNA型や指紋が現場に残されたものと一致し、聡美さん殺害への関与が発覚した。
●叶わなかった極刑、「せめて終身刑に」
北口さんは極刑を願ったが、現行の法律や判例では無期懲役が限界だった。 「家族を奪われた人間にとって死刑以外はありません。なんで娘がおらんなってお前が生きているのかと。詐欺や傷害事件であれば、加害者に『悔い改めてやり直しなさい』と言えます。でも人の命を奪った人間に『立ち直り』という考えはありません」 かけがえのない家族を殺された人は、加害者が生き続ける無期懲役という刑罰をどう受け止めているのか。 「犯人を世間と隔離するための刑じゃないかと思います。なので、無期懲役刑がまた塀の中から出てくるための刑罰だと考えたら、残された家族は悲しい思いしかしません」 「無期」の懲役刑であるのに刑を受けた人がまた社会に戻ってくるかもしれないという現実に、北口さんら遺族の感情は追いつかない。 「せめて無期懲役刑と死刑のあいだに、終身刑のような刑がほしい」 死刑と無期懲役刑、命を奪った加害者と奪われた被害者。そのあいだにある”生と死”という深い溝は決して埋めることができない。 17歳で殺害された聡美さんが生きていれば、今年7月で37歳になっている。 ※この記事は弁護士ドットコムニュースとYahoo!ニュースによる共同連携企画です。