「8月の株価下落で1億円飛んだ」累積利益40万円→7億円の投資家が危機を好機と思える付箋だらけ"辞書"の正体
■相場全体の上げ下げに一喜一憂する必要はない 私は、自分が投資した銘柄の買値をあまり気にしないようにしています。また、通常時は日々の株価の値動きにもあまり関心がありません。7月11日に日経平均株価が4万2426円77銭の史上最高値を付けた上げ相場に歩調を合わせ、株式投資を中心に形成してきた私の累積利益は7億円台に達しました。きっと「億り人のかぶ1000さんが株価を気にしないなんて……」と思われる人がいることでしょう。実際に、株式市場の取り引き時間中には株価を頻繁にチェックしません。 【図表】かぶ1000さん流株式投資 8月5日に日経平均株価が終値ベースで前週末比4451円28銭安の史上最大の下げ幅を記録する最中、投げ売りや損切りをする人もいたと思います。そこで改めて感じたのが、正しくて道理にかなった株式投資をしていれば、必ずリターンがあり、相場全体の上げ下げに一喜一憂する必要がないということです。このときも、「株価の急落で今年の利益が帳消しになったとしても、落ち着けば株価は適正な水準に回帰する」と、私は冷静に成り行きを見ていられました。
■最も賢明な投資方法は実質PBRを重視すること そんな私が株式投資を始めたのは、中学2年生だったバブル経済期の1988年からです。元手は、もともと貯金をしていた40万円でした。 ビギナーズラックや株価が安い銘柄に投資する「低位株ブーム」に乗り、高校2年で株式資産が1500万円に到達。しかし、その90年にイラクのクウェート侵攻を受けて株価が暴落し、一時は200万円に減少。そうしたなか、株式に関する知識が乏しいことを痛感し、高校卒業後は会計の専門学校に進学。企業の本質を示す財務内容を精査できるようにするためです。 実は、その頃から「株式投資だけで生活できるのでは」と思い始めていました。専門学校卒業後の進路で就職も検討しましたが、日中拘束されると、株式投資がしづらくなります。それに財務を勉強するなかで、企業は収益の1~2割くらいしか人件費に充てていないことを知り、頑張ったところで割に合わないと思い、専業投資家として生きていくことを決めたのです。 とはいえ、それから投資の成績は相場環境の悪さや、自分自身の投資方針が明確に定まっていないことも相まって鳴かず飛ばずの状況が続きました。 そんなある日、自分の運命を変える一冊の本と出合いました。ベンジャミン・グレアムの『賢明なる投資家』です。グレアムは、債券の利回りと比較して株のリターンのほうが高く、長期的な資産形成では株式投資が最も有利であることと、それには「バリュー投資」が最も合理的な方法であることを、豊富なデータを基に論理的に説明していました。 バリュー投資は、企業が保有する現金や不動産、有価証券などの資産を時価で評価して投資します。たとえ、業績が一時的に落ち込んでも、資産価値は大きく痛まず、バリュー投資は、「ローリスク・ミドルリターン」を期待できます。仮に勝率が50%でも、勝ちが負けを少しでも上回る投資を続けると、株式資産は着実に増えていきます。 そのバリュー投資で、私が重視している指標の一つが「実質PBR(株価純資産倍率)」。BPS(1株当たり純資産)に、保有資産の時価と簿価とのギャップである「含み資産」を加え、株価を割って出します。その実質PBRは値が小さいほど割安であり、私は「PBR0.4倍以上0.5倍未満=割安」「PBR0.3倍以上0.4未満=超割安」「PBR0.3未満=激安」と分類し、その時々に最も割安な銘柄を探して、投資し続けてきました。 具体的には、リスク分散の観点から、集中投資は避けて、複数の割安な銘柄に投資します。それらをリストアップしておき、より割安な銘柄が見つかったら即座に入れ替えを実施。その際にキャピタルゲインを得られればベストですが、逆にロスが発生したとしても、気にせずに売却して入れ替えます。ですから、冒頭で述べましたように、投資した銘柄の買値も現在値も気にしないのです。結果として、私は年々増益を続けることができ、今年に入って累積利益の7億円台乗せを果たしました。