「材木といっしょに人間が浮いている」伊勢湾台風では3メートルの浸水も 「想定外」に備える高潮予測の最前線【伊勢湾台風から65年】
65年前の伊勢湾台風では高潮が名古屋市南部などを襲い、甚大な被害が出ました。気候変動で年々、台風が巨大化する中、「想定外」に備える最新の高潮予測を取材しました。 【写真を見る】「材木といっしょに人間が浮いている」伊勢湾台風では3メートルの浸水も 「想定外」に備える高潮予測の最前線【伊勢湾台風から65年】 1959年9月26日、東海地方を直撃した伊勢湾台風。日本最大のゼロメートル地帯を襲った「高潮」で被害が拡大し、死者・行方不明者は5000人以上に。65年が経とうとする今も、台風被害としては史上最悪です。 (長澤春男さん) 「死体をここまで運んで、ここに棺おけをいっぱい並べた」 「いやだな、二度とあんな目に遭いたくない」 伊勢湾台風を 経験した長澤春男さん。99歳になったいまも、当時の光景は脳裏に焼き付いています。34歳だった長澤さんは、消防団員として活動していました。 名古屋市南区は「高潮」で、特に大きな被害が出た場所です。 (長澤さん) 「水が深くて高さがどれぐらいか全然分からない。歩けないし、立てないから。一面水」 伊勢湾台風では名古屋港周辺の貯木場にあった大量の材木が「高潮」で押し流され、町を襲いました。 (長澤さん) 「高潮によって材木が流れてくるのが怖かった。材木と一緒に人間(遺体)が浮いている。あの光景が一番嫌だった。あっちこっちと、一人二人じゃない。泣けてきて涙が止まらなかった」 海水は川を逆流し、南区白水町の浸水は3メートルに達しました。 高潮は、台風や低気圧による「吸い上げ効果」で上昇した海水面に暴風が吹き付け、「吹き寄せ効果」で海岸付近の海面が異常に上昇する現象。 超大型だった伊勢湾台風では、名古屋港付近で高さ3.9メートルにも達しました。 ■高潮は堤防を越える?予測の最前線 国の研究施設で行なわれた「高潮」の実験。 8分の1スケールで本物と同様のコンクリートで作られた防波堤に人工的に発生させた高波を繰り返しぶつけると、波が堤防を越えるだけではなく、基礎部分の地盤がえぐられるなどして、防波堤が崩れ、大きな浸水被害を引き起こします。 (国総研海岸研究室 姫野一樹主任研究官) 「(高潮は)非常に長い時間水位が上がるような状態になるので、危険性が高い状況になる」 現在、高潮警報は、潮位の観測値と予測値を元に気象庁が発表しています。それでも、2004年の台風23号では、高知県室戸市で住宅が壊れるなどして、3人が死亡したほか、2018年の台風21号では、兵庫県芦屋市周辺で住宅の浸水が300棟に達するなど、高潮が防波堤を越えてしまい、被害につながるケースはたびたび起きています。