「第32回全国身体障害者野球大会」千葉ドリームスター 昨年の悔しさを胸に掴み取った開幕投手と4番の座。原動力となったチームの存在
「ドリームスターで野球がしたい」が原動力になった開幕投手
ドリームスターは初戦、「福島アクロス」との対戦を迎えた。1回表から打線がつながり、試合の主導権を握る。 1死2塁で先制のチャンスをつくると、3番・土屋来夢が中堅の頭を超える打球を放つと快速を飛ばし三塁打となり、先制点をもたらした。 昨年行われた「世界身体障害者野球大会」では東日本で唯一の日本代表に選出され、世界一に貢献した土屋。今シーズンからはチームの主将に就任し、講演活動で自身の体験を語るなど、グラウンド内外で活躍の幅を広げている。 自覚を持って臨んだこの大会。打席での心境を語った。 「初回という事もありチームに勢いをつけたかったですし、個人としてもキャプテンとして初陣だったので何としても勝ちたい気持ちでした。とにかく結果に拘って打席に入りました。 頭で思い描いていた事を体現できましたし、良い雰囲気を生み出せたので本当によかったです。満足はしていないですが、自身の幅が広がっている事を再認識できた打席でした」
重要な初戦の先発を任されたのは鈴木貴晶。 3年前の6月15日、機械の清掃作業中に左手を巻き込まれ、指を4本失うアクシデントに見舞われた。2か月半の入院で7度の手術、退院後も3度の手術を要した。 そんな中で希望の光となったのが野球だった。入院中にSNSを通じてドリームスター、そして身体障害者野球の存在を知った。 「中学卒業以降は野球から離れていましたが、チームを知った時に『ここで野球がしたい』と思い、前向きに治療・リハビリを頑張る原動力になれたんです」 チームも全員で歓迎し、鈴木もすぐに戦力として頭角を表す。昨年4月に入団すると、翌月には早くも第31回大会に内野手として出場した。しかし、 「初めてほっともっとフィールド神戸に立った時はプロ野球で試合してる場所で野球が出来ると心から感動しました。ただ、試合では満足のいくプレーが何一つ無く、エラーもたくさんして自分のせいで負けたと未だに思っています」と、悔しさが残った。 一方で野球ができる喜びも大きく感じることができ、毎週ある練習も前のめりに取り組んだ。一年後に再び戻ってきた36歳は開幕投手そして打線でも4番を務めるなど投打で主軸を担う存在へとなっていた。 「緊張よりもチームのみんなで試合ができて本当に楽しかった」という背番号5はマウンドで躍動し、アクロス打線を2回無失点に封じた。 チームは初回に3点を先制後、2回にはさらに猛攻を見せこの回8得点。最終的に3回で12-1と快勝し、準々決勝へと駒を進めた。 「まだまだ実力不足を痛感していますが、このチームで優勝したいと強く思っています!」と充実した表情で試合を振り返った。