「第32回全国身体障害者野球大会」千葉ドリームスター 昨年の悔しさを胸に掴み取った開幕投手と4番の座。原動力となったチームの存在
準々決勝では”あと1ストライク”が明暗に
翌日の準々決勝は、もう一つの会場であるG7スタジアム神戸(神戸サブ球場)で行われた。ドリームスターが対戦したのは北九州フューチャーズ。 本大会で優勝4回・準優勝3回を誇っており、主将の竹下祥平は昨年の世界大会の日本代表選手としてもプレーした。 ドリームスターの先発はエースの山岸英樹。現在は野球とともにパラ陸上(38クラス)の選手でもあり、パラリンピック出場を目指している。 鈴木同様に打線でも主軸を担う35歳はこの日も落ち着いたマウンドさばきを見せる。多彩な変化球を操り、5回まで5奪三振・無失点と堂々たる投球を披露した。 この試合は両チーム互角の戦いを見せ、3回までは無得点と1点を争う様相となった。
試合がついに動いたのは4回。前日は4番を打ち、この日は2番に入った城武尊が先頭で三塁打を放ちチャンスメイク。続く土屋が意図的に叩きつけるゴロを打ち、城を本塁に還した。 続く6回表も、先頭で城が二塁打を放ちチャンスをつくると5番の山岸が走者を還し、追加点を挙げる。18年の世界大会で日本の世界一に貢献した男が2本の長打で火付け役になった。 ドリームスターが2点リードで迎えた最終回、ここからまさかの展開が待っていた。守備の乱れから無死満塁のピンチを招くと竹下の適時打で1点差に迫られる。2死までこぎつけ、あと1ストライクまで追い込むも同点を許してしまう展開に。 瀬戸際で吹き返したフューチャーズの勢いに飲まれるように、タイブレークで力尽きゲームセット。あと一歩のところで勝利へは届かなかった。 チームを率いた小笠原一彦監督。自ら三塁コーチャーズボックスに入り、グラウンドから指揮を執った。2試合をこのように総括した。 「投手力の向上により守りが安定して大崩れしなくなりました。チームの一体感が出てきたのは収穫でした。 ただ、自分でプレッシャーをかけて自らを苦しめてしまうケースもあるので、練習試合などであえて加圧して慣れていくことだと思います。 あと怪我は一番避けたいので、暑さでバテやすくなる8月に向けて個々の体作りもしていきたいです」 8月下旬には地元・千葉県で関東甲信越大会を開催する。ここで勝利し、来年再びこの地で戦うため、残り約3か月を駆け抜ける。
取材 / 文:白石怜平