【リセットコリア】弾劾事態が政界に送った警告状=韓国
憲法裁判所が尹錫悦(ユン・ソクヨル)大統領の12・3非常戒厳宣言行為が正当な政治・統治行為かどうかを審理して判決するまではもう憲法裁の時間だ。弾劾以降、政界は次期大統領選挙をめぐり深刻な対立を予告している。憲法裁がいつ判決を出すのかという時点をめぐっても激しく対立している。8件の事件、12件の容疑で裁判を受ける李在明(イ・ジェミョン)民主党代表の次期大統領選挙出馬可否と直結しているからだ。 憲法裁が180日以内に結論を出さなければいけないが、順調には進まないと予想される。弾劾賛成・反対側の市民団体がそれぞれ大規模集会を予告しながら味方に有利な判決が出るよう圧迫する支持層結集戦略を見せているからだ。政界もこれに乗る勢いだ。すでに政略的な政界の早期大統領選挙時計は作動している。 弾劾の受恵者である李在明代表はすでに「憲法裁は手続きを迅速に進めるべきだ」と圧力を加えている。李代表は「国政安定協議体」も提案し、地域貨幣予算のための補正予算編成に言及するなど国政主導権争奪戦に動いている。また、ポピュリズム政策として批判を受けた25万ウォン(約2万7000円)民生回復支援金法などもまた持ち出した。 国民の力は弾劾賛成党論を提案した韓東勲(ハン・ドンフン)代表を辞任させるなど民心に逆行している。国民の力は「尹錫悦戒厳および弾劾の泥沼」にはまった自分たちの状況を隠したまま「李在明有罪」の反射利益を期待する戦略で早期大統領選挙での幸運を願っている。 政界は弾劾後にも戒厳事態を呼んだ陣営対決をまともに反省していない。手段を問わず権力を握ろうとする「選挙至上主義」に固執している。こうした態度に固執すれば国民は怒りの鉄槌を下すだろう。国民は与野党が極端な陣営対決の終息のために対話と妥協、熟議を通じた公共性の実現という共和政治の回復を命令している。これに従わなければ授権資格を与えないだろう。 ネガティブキャンペーンや中傷宣伝など支持層結集対決を煽って政権を握ることになれば、その政権は半分の政権に没落する可能性が高い。そのような政権がどれほど続くだろうか。基本所得のようなポピュリズム政策の貫徹のために無理のある手段で法改正を進めれば、また弾劾に向かう可能性も高い。 もう政界は小細工をやめて責任ある行動をとらなければいけない。多数決の暴政で法治主義を脅かす民衆扇動家の「民主政」と戒厳を宣言する僭主扇動家の「僭主政」がもつれて民主共和国がどのように墜落するかを省察し、これを治癒・予防することに力を合わせる必要がある。 2つのことが重要だ。「尹錫悦有罪」が「李在明有罪」を隠す免罪符になってはいけない。政界が相手陣営の「有罪」で自分たちの陣営の過ちを隠そうとする手法から抜け出さなければいけない。 1つ目、戒厳勢力に対する与党の粛静が求められる。戒厳事態は逮捕・拘禁などで政治的競争者を除去しようとしただけに政治失踪を象徴する。政治は複数の人たちが対話をして公論をすることだ。戒厳は言葉でなく強圧的武力を使用したという点で極めて反政治的だ。今回の事態は21世紀の脱冷戦時代に「冷戦(反共)自由主義哲学」で武装した戒厳勢力が反則負けを喫したようなものだ。「金建希(キム・ゴンヒ)特検」を前面に出して自身の司法リスクを防弾しながら大統領選掌握を狙った李在明代表を捕らえようとした尹大統領は逆に捕虜の身になった。 2つ目、民主党の自省が必要だ。民主政治(Democracy)は混合政を追求する民主共和政とは違い、多数派と少数派が対立する不安定な政治体制だ。このため民衆扇動家と僭主扇動家が競争する中で没落するとみるアリストテレスの「政体循環論」で今回の事態を眺める必要がある。今回の事態は尹錫悦大統領と与党の責任だけでなく、立法独裁と弾劾を乱発しながら極端政争を誘発した野党にも責任がある。 特に民主党は李代表の犯罪容疑を捜査した検事を次々と弾劾した。選挙法1審で有罪を受けた李代表は2審の裁判を遅延させようとした。政界は弾劾後に尹錫悦も李在明も法の上にいないことを立証し、国民の信頼を得なければいけない。 チェ・ジンウォン/慶煕大公共ガバナンス研究所教授