「ヒマラヤ山中にも心はいつも東京に」…植村直己さんがつづった「妻への愛」、出身地の兵庫・豊岡で公開
兵庫県豊岡市日高町出身の冒険家・植村直己さんが妻の公子さんに出した手紙やスケッチを集めた企画展「妻への手紙」が、同町伊府の植村直己冒険館で開かれている。遠征先で書かれた手紙からは、公子さんを思う植村さんの優しさや愛情が伝わってくる。2人の思い出の写真もあり、冒険家としての植村さんとは異なる一面を知ることができる。(藤田真則)
今年は、植村さんが1984年2月、北米最高峰のデナリ(マッキンリー)の冬季単独登頂に成功後、消息を絶って40年。また、2人が74年に結婚して50年の節目になる。
企画展では、直筆の手紙やはがき10点を公開しているほか、スケッチなどをパネルで展示。下宿先近くのトンカツ屋で出会った頃の印象を振り返る公子さんの言葉を紹介したパネルには、婚約中にチベットから出された手紙の内容が記されている。
「少なからず公ちゃんとの出合いは私の人生を総てかえ、私を救ってくれる人であることまちがいありません」「このヒマラヤ山中にも、心はいつも東京にあり、我々の5月の式のことが心配であり、便りせずにいられません」(原文ママ)――などと当時の植村さんの心境がつづられている。
また、ヒマラヤでの登山中は郵便はがきがないため、現地で買った紙に山々をスケッチ。その時々の思いを添え、自分がしていること、見ている風景の素晴らしさを伝えようとした。
写真展示では、冒険を終えた植村さんと公子さんが現地で一緒に納まったスナップや静岡・熱海でのオフショットを紹介。北海道・帯広で盆踊りに参加した時の一枚も。植村さんが行方不明になって1年5か月が過ぎた85年7月、マッキンリーを望むベースキャンプで公子さんが花を手向けた際の写真は初公開という。
植村直己冒険館の岡本美智子マネジャーは「植村さんの手紙には公子さんへの思いがにじみ出ている。夫婦の情愛を感じてほしい」と話している。
9月30日まで。入館料は高校生以上550円、子ども(3歳以上)330円。水曜休館。問い合わせは同館(0796・44・1515)。