傑出した存在がいない。U-23日本代表が露呈した限界。スペインにはフェルミン・ロペスがいた【パリ五輪/西部の目】
五輪をどう使うか
後半、日本は山田楓喜を藤尾翔太に交代。さらに斉藤光毅→佐藤恵允、三戸舜介→植中朝日、山本理仁→荒木遼太郎。選手交代で強度を保ち、得点を狙う。 グループステージ最終戦(U-23イスラエル代表戦)で行った荒木、植中のボランチ起用に関しては、今後はないだろうと思っていたが、84分に荒木が登場した時点で植中がボランチに下がっていた。しかし、その攻撃的な布陣も得点には至らず。CKから追加点を許して0-3となった。 ただ、得意のCKから細谷、高井幸大のヘディングシュートがポスト、バーに当たっていて、決してチャンスがなかったわけではない。 スペインはDFを1人余らせた状態でプレスをかけていた。つまり、日本のCB2人をFWが1人で対応する形の初期配置である。対して、日本はフリーになる高井、木村誠二のどちらかがドリブルで運び出し、攻撃の起点になっている。マンマークされながらも細谷はしっかりとキープできていて、ルーズボールの獲得競争で藤尾が強さを発揮、斉藤や佐藤は1対1から突破するなど、個の勝負で勝利する場面はいくつもあった。 山田、山本、関根が絡む右サイドからの攻め込みも効果的。小久保玲央ブライアンはこれまでと変わらず好セーブをみせて“国防”ぶりを発揮していた。 日本はオーバーエイジ枠を使わない唯一のチームだった。さらに年齢的にOAにあたらない久保建英、鈴木唯人らも招集できなかった。少なくとも久保がいれば、フェルミン・ロペスに対抗する存在になりえたかもしれない。 とはいえ、個人的には今回の編成での収穫も十分にあったと考えている。五輪サッカー男子はU-23の年齢別大会でありながら、OA3人が認められている極めてイレギュラーな形式だ。これはサッカー的に意味があるわけではなく、IOCとFIFAの綱引きの結果としての妥協の産物である。 ある意味歪な大会に対して、各国協会がどう向き合うか、向き合えるかはそれぞれ事情が違うので温度差も生じている。今回、日本は結果的に純粋なU-23のチームとして参加することになった。A代表のクローン的な戦術の下、若い選手に経験を積ませるという1つの目的は上手く果たせたのではないか。それぞれ事情がある中で、五輪をどう利用するか。その点ではベスト8で敗れはしたが意義のある使い方はできたと考える。 (文:西部謙司)
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