堂本剛は「生まれ持って何かを持っている人」荻上直子監督が語る新作『まる』
この映画は最初から“世の中がすべて終わったあと”というイメージがありました
興味深いのは、現実のような、夢のような物語が描かれるにも関わらず、本作は“空想”ではなく、現実の社会に起こっている出来事や、そこで交わされる言説に深くコミットしていることだ。繰り返すが、この映画は“寓話”ではあるが、完全なファンタジーではない。 「この映画は最初から“世の中がすべて終わったあと”というイメージがありました。出てくる人はみんな孤独で、寄り添ってくれる人は誰もいない。だから作りながら少し寓話的なものになるな、という意識はあったかもしれません。 この映画の中には“価値”という言葉が出てくるんですけど、映画というものも究極の究極を言ってしまうとこの社会にはなくても良いものかもしれないですし、社会の中で“生産性の低い人”と発言する人がいると、その言葉に対して強い疑問があります。子供の頃から『将来は人の役に立つ人間になりたい』と言わされてしまう環境とか、人の役に立たないといけないと思わされてしまう状況も。それは偏りすぎているのではないかと。 この映画では自分と周囲の関係性を描きたかったですし、こういうテーマを提示することが映画をつくることの醍醐味でもあったりするので、そこは逃げずに勝負しないと!(笑)と思ってます。私は映画を作りたくて作りたくてしょうがない人間なので、そこはどの作品でも全面に出していかないとダメだと思っています」 本作は、観れば観るほど不思議な世界と不思議な物語を描いている。しかし、じっくり観ていくと沢田の物語、彼が描いた「まる」が広がっていく過程、「まる」を広めている人間、「まる」のブームに嫉妬する者、便乗しようとする者……そのすべてが私たちが生きる現実の“映し絵”のように見えてくる 。 すべてが終わった世界で、寄り添う者が誰もいない者たちが集う世界があるとして、あなたはこの世界のどこにいるだろうか? 「堂本さんもおっしゃっていたんですけど、この映画は観る人によって捉え方が違うし、面白いと思うポイントも変わってくると思うんです。堂本さんが『不安を感じている若者にもちゃんと伝わってほしい』と言っていたんですけど、私もそう思っています。 いまはみんな不安じゃないですか。私もそうですけど、誰もがみんな不安で、だけどこの映画を観ていただいて、沢田に寄り添ってもらえるといいなと思っています」 映画『まる』 10月18日(金) 公開 (C)2024 Asmik Ace, Inc.