「死にたい」と言う人に「死なないで」とは絶対に言わないで…子供たちからのSOSの“最前線”
夢や情熱は持っても持たなくてもいい
自らも、過去に自死を考えたことのある大空さんは、“悩みを抱えているのは弱い人”で、“夢を実現し悩みをすべて解決することこそ人生の正解だ”という社会からはそろそろ脱却しなくてはという。 大空さん: 例えば、小学校でも将来の夢とかを書いて発表したりするわけですよね。けれど夢や情熱、やりたいことがない子は「それってやっぱり悪いことなんだ」と思うわけです。もちろん夢や情熱がある子は素晴らしいと思いますし、それを否定するわけでは全然ない。でも夢を追いかけて、情熱があってやりたいことを何でもできて…みたいな状態をゴールに置きがちなんですね。それが社会の正解になっちゃってるわけですよ。 それがないっていう子だって別に悪いわけじゃないんです。生きていく中で悩みがあって、話を聞いてもらって、ちょっと軽くなって、とりあえず頑張ってみよう、でもやっぱりまた苦しくなって、また話を聞いてくれる人が周りにいて──。これを繰り返していくのも本来の人生の形なんだと思うんです。 この”行ったり来たり”の人生を当たり前なこととして認識する人がもう少し増えれば「もうちょっと生きてみよう、ちょっと気持ちが軽くなった」って言ってくれる人が増えるんじゃないかなと思います。
良好な家族関係だからこそ家族に相談できないこともある
またコミュニケーションがしっかり取れている家庭でも、悩みを打ち明けられないことも多いという。 大空さん: 良好な家族関係を築いているからこそ親や家族には心配や迷惑をかけたくないと思う子もたくさんいます。不安にさせたくないから悩みを相談できない。ですから仮に子どもが親御さんに相談しなくても、親御さんは自分を責めないでほしいんです。
親も相談窓口を頼っていいんです
ーー親としては、子供の悩みを理解してあげたい、一緒に解決したいと思うが 子どもたちの気持ちを捉えるのは難しいと思っています。私は今25歳で、相談窓口を運営しているNPOの世界では一番若いのですが、中学生とか高校生がする話は分からないんです。だけど、分からないという前提に立たないと、話をフラットに聞けません。相談を受けるということは「傾聴する」ということなのです。これはとても難しいことだと思います。 私たちの法人には臨床心理士や公認心理士が多く在籍していますが、彼女たちは徹底的に自分が無知であるという感覚を持つトレーニングを受けてきているから、相談への「無条件の傾聴」ができる。 私はその感覚が本当は、親御さんにも必要なんだと思います。自分には子どもたちのことは分からないという前提に立てて、初めてフラットに子どもの話が聞け、何が起きているのかを分析できるのではないかと思います。 そして、もし親が子どもの悩みや相談を解決してあげられない状況になっても、親は自分を責めないで積極的に相談窓口を利用してほしいと訴える。 大空さん: 今は社会がまだ、「悩みの解決は家庭の中ですればいい」と思っている状況だから、親御さんは子どもの話を全部聞かなきゃいけないと思っている。それが親の務めだと。でもご自身で無理だと思ったら相談窓口を子どもに紹介してもいいんだという状況を作りたいんです。それが親としての役割を放棄しているとか、親として失格だと思わないようにするために、相談はインフラにならなきゃいけないと思います。 電話相談も半世紀近い歴史があるし、チャット相談だって24時間365日、世界中どこにいても相談できる環境が整いつつあるわけですね。 なので、ご自身でちょっと無理だ、これは手に負えないなと思ったら、ご自身のお子さんのことだとしても相談窓口を使ってください。それは逃げでもなんでもないですから。 (取材・執筆:フジテレビアナウンサー兼報道局解説委員 島田彩夏)
島田彩夏