箱根駅伝Stories/城西大・平林樹 主将として臨む最後の箱根「俺たち4年生がやらないと」
新春の風物詩・第101回箱根駅伝に挑む出場全21チームの選手やチームを取り上げる「箱根駅伝Stories」。新たな100年への第一歩を踏み出す大会に向かうそれぞれの歩みを紹介する。 箱根駅伝2025 城西大の選手名鑑をチェック!
トラックシーズンで大車輪の活躍
大学最後のシーズンで、平林樹(4年)はキャプテンとして力強くチームを牽引してきた。櫛部静二監督が「言葉が先行してチームを引っ張るタイプではありませんが、姿勢で見せるキャプテン」と言うように、平林は「自分からいろいろこうしてほしいと言うのではなく、個人個人が自分の目標に向かって必要なことを各自で考え、最大限に努力できるチームを作りたかった」と、チームメイトの自主性を重んじた。 自身もまずは自分の競技力向上に目を向け、とくに前期のトラックシーズンで大車輪の活躍を見せた。5月に5000mで13分39秒77の自己ベストをマークすると、5日後の関東インカレ1部10000mではチームメイトのヴィクター・キムタイ(3年)に競り勝って2位。タイムも28分03秒13と、46秒以上の大幅自己新で27分台に迫った。櫛部監督は「本人の自信にもなったと思いますが、チームとしても非常に盛り上がった。キャプテンが強さを見せたことは、前期の象徴的なシーンでした。競技に対して熱心で、走ること以外にも真剣に取り組む。そういう姿は他の学生たちの見本になっています」と平林を高く評価する。 しかし、夏を前にその勢いに陰りが見え始めた。連戦の疲労で練習をこなせなくなり、夏合宿に入ると、「腸脛靭帯を少し痛めて、8月はジョグしかできなかった」と明かす。結局、合宿中は調子が上がらないままだった。 9月半ばの合宿明けとともに身体が徐々に復調し、「夏合宿をしっかりこなせなかった不安がある中、でも、走れてきたから大丈夫だろうと、半々ぐらいの気持ちで臨んだ」のが出雲駅伝だ。4区に起用された出雲は、3区区間賞の快走でチームを12位から5位に押し上げたキムタイからタスキを受けた後、平林は区間9位で順位を1つ落としてしまう。 「調子は悪くなかったけれど、4位が見える位置にいたので力みがありましたし、何となく『やるぞ』という気持ちになれていなかった。だいぶ良くない走りをしてしまいました」 今季の城西大は3年生に実力者が多く、なかでも斎藤将也(3年)とキムタイは箱根駅伝で1年時から2年連続で2区、3区を担ってきたダブルエースだ。平林は2人を「駅伝になったら頼もしい存在」と絶対的な信頼を置きながらも、4年生として「頼もしいで終わるのはいかがなものか」という複雑な思いを持っている。 「先輩が後輩に頼り切っているだけではチームとしても良くないですし、僕も将也やヴィクターに負けたくない、負けていてはいけないという気持ちが強いです。前半シーズンの走りから言えば、自分もやってやれないことはない。3人でチームを引っ張っていけたらなと思っています」 その根底には「4年生がしっかりしないといけない」という考えがある。前回3位と躍進した箱根では、山本唯翔(SUBARU)や山中秀真(トーエネック)、野村颯斗(中国電力)という4年生が往路でチームを勢いづけた。当時の強力な最上級生の印象が強く残っているのかもしれない。