諏訪家「源氏物語」写本全54冊活字化 諏訪市博物館がプロジェクト 長野県
長野県諏訪市博物館(同市中洲)は、同館が所蔵する高島藩主諏訪家に伝わる「源氏物語」の写本全54冊の原文を活字化(翻刻)するプロジェクトを始める。一般の協力者を募り、諏訪家本の翻刻を作成。作者の紫式部が主人公のNHK大河ドラマ「光る君へ」が放送され、源氏物語への注目が高まる中、諏訪家本の資料としての価値付けにつなげていく。 同館によると、諏訪家本はいつ誰が写本したかは不明だが、最終巻の奥書には慶長12(1607)年12月13日との旨の表記があり、室町後期~江戸初期に作られたものとみられる。表紙はその巻にちなんだ草木花が描かれ、見返しには金箔や銀箔が散りばめられた豪華な装い。54冊すべてそろっている写本は珍しいという。 源氏物語は原本が残っておらず、人の手で書き写したものが読み継がれてきた。書き写す作業の中で、文字や言葉が変わってしまった箇所もある。そこで、協力者におよそ1人1帖(冊)分の諏訪家本の写真データと該当部分の他本の翻刻資料を渡し、各自1字ずつ照らし合わせて異なる箇所を資料に書き込んで提出してもらい、まとめて翻刻を作成することにした。 写本には系統がいくつかあるといい、活字化して諏訪家本がどの系統に属すか判断したい考え。ゆくゆくは作成した翻刻を基礎資料としてインターネットで公開し、全国の有識者の研究資料にしてもらい、さらなる解明につながることを期待している。 21日午後1時30分から、事前説明会を同館学習室で開く。同館学芸員がプロジェクトの概要、作業の流れ、源氏物語や諏訪家の歴史などについて説明。初心者には平仮名のくずし字解読のレクチャーも行う。 また、1人で読み進めるのが難しい人を対象とした「みんなで読む会」を、来年2月から6月までの毎月第1日曜日に実施。最終回はそれぞれ読んできた内容を共有する場とし、物語の読み合わせや感想発表をする。 大河ドラマの影響もあって県内外から予想以上の申し込みがあり、定員は残り十数人程度。企画した学芸員の三嶋祥子さんは「いろんな人がつながり、学びの輪が広がってほしい。この機会に源氏物語を原文で読んでみませんか?」と呼び掛けている。 申し込みは二次元コードの電子申請フォームや電話で受け付けている。問い合わせは同館(電話0266・52・7080)へ。