中国EVの新型車発表が凄い。シェア奪われる日独車が追いつけない理由とは?
日本メーカーも取り組み強化
こういった先進運転支援機能は今まで中国メーカーのみに目立っていたが、ここ最近は日本メーカーでも自動化運転に対する取り組みを強化させている。トヨタの広州汽車との合弁会社「広汽トヨタ」が2025年春に発売する中国専売BEV「bZ3X」では、中国の自動運転ベンチャーMomenta(モメンタ)」と共同で開発した自動運転システムを搭載する。ルーフ前端にはLiDARユニットを1基搭載しており、先述のNOA機能にもしっかりと対応するとアピールしている。bZ3Xは同時に発表された「一汽トヨタ(第一汽車との合弁会社)」の「bZ3C」よりもファミリー向けで保守的な設計思想だが、インフォテインメントシステムはファーウェイと共同で仕上げたものと言う。広州モーターショー2024のステージでは、中国市場で重視される「運転支援機能」「インフォテインメント」の両方に加えてトヨタならではの「安全性」も欠かさずに強調していたのが印象的だった。 今回出展した日本メーカーの中で新たな市販車を唯一発表した日産も、純電動セダン「N7」でMomentaと開発したNOAなどの機能を搭載するとしている。だが、N7ではbZ3XのようなLiDARユニットが確認されておらず、シャオペンのようにコスト削減でカメラ方式を採用する可能性が高い。 競争激化で低価格EVへも搭載進む中国メーカーは数多くの新車種を発表したが、中でも広州汽車の電動ブランド「アイオン」から登場した純電動セダン「RT」は大きな話題を呼んだ。全長4865 mm x 全幅1875 mm x 全高1520 mm、ホイールベース2775 mmと比較的小柄ながら、同ブランドで今までラインナップされてきたセダン「S」よりも若干大きいモデルとなる。アイオン RTは15.58万元(約323万円)から販売する上級グレードに高精細フロントカメラを2基、LiDARユニットを1基搭載しており、シャオペンの部分で紹介した数々の機能にも対応する。 LiDARはこれまでコストのかかる装備品なため、低価格帯のEVで採用される例は稀だった。だが、アイオン RT、さらにはbZ3Xも15万元前後のモデルに採用するということで、今後はアンダー15万元クラスの自動化運転における競争が激化しそうな予感だ。これからの中国市場は「EV(含BEV・PHEV)かガソリンか」というフェーズではなく、ここ最近停滞気味だった自動化運転をいかに広めるかがポイントになってくるのかもしれない。そう感じた、今回の広州モーターショーであった。 (文:中国車研究家 加藤ヒロト)