世界で“争奪戦”…バイオ燃料となる使用済み天ぷら油『廃食油』国内回収と消費が日本のエネルギーの支えに
高まる需要に、国内の廃食油の取引価格は、直近1年で3倍ほど跳ね上がっている。激しさを増す争奪戦は、サプライチェーンの拡大を目指す企業に課題とジレンマを感じさせていた。 豊通エネルギー 種田舜さん: 「(廃食油を)輸出してしまうと、移動でもCO2が発生してしまい、矛盾が発生してしまう。地域で地産地消してもらうのがあるべき姿だと考えている。バイオ燃料の供給・需要先の開拓・サプライチェーンの構築を通じて、地産地消ができるような循環の仕組みを対策として行っています」
国内で回収した廃食油を国内で消費することが、エネルギー自給率の低い日本の救いになると、期待されている。
■廃食油の「地産地消」のカギは『家庭』 捨てられている10万トン
争奪戦の中、国内のバイオ燃料導入は着実に進んでいる。 愛知県大口町にある運送会社「ユーネットランス」は2023年、『100%バイオ燃料走行』の大型トラックを導入した。見た目も通常のトラックと変わらず、ディーゼルからバイオ燃料に変えてもエンジン周りはそのまま使え、導入コストがかからないのもメリットだ。
ユーネットランス 熊澤洋一社長: 「年間で(バイオ燃料を)2万5000リットル使用しています。CO2としては60トンを削減できたという換算値になります。“走って稼ぐ”ということですから、より多くより遠く運ぶのが我々の仕事。カーボンニュートラルを達成するには、今できることをすぐチャレンジしようと」 電動の大型トラック普及にはまだ時間がかかると考え、「環境にやさしい選択肢」として、バイオ燃料トラックにたどり着いた。 しかし、争奪戦の影響でバイオ燃料は軽油に比べ割高となっていて、カーボンニュートラルに対する荷主の理解と協力がなければ、継続できない状態だ。
資源エネルギー庁の統計によると、軽油の産業用価格は直近の24年3月で127円。対するバイオ燃料は、仕入れ業者によってばらつきがあり統計はないものの、軽油の2倍から3倍で取引されているとみられている。今後、バイオ燃料が定着し拡大するには、価格が安定する仕組みづくりが必須だ。