『ストップ・メイキング・センス』をTalking Headsの4人が語る。「愛を表現した」40年前のライブが蘇る
「ちょっとオタクっぽいやり方」で愛を表現したパフォーマンス。その色褪せない熱気と高揚感
先入観抜きで映画を観れば、白人ミュージシャンが黒人音楽を利用しているようには見えないだろう。ステージに渦巻いているのは一緒に音楽を生み出す喜びと興奮であり、そうしたライブの本質をデミはしっかりとカメラで捉えている。 デミはパフォーマンスを記録するだけではなく、そこに関わる人間を見つめた。ミュージシャンのさりげない表情や仕草に注意を払い、一人ひとりの個性が伝わるショットを入れる。そうすることで、本作を人種やジャンルを超えてミュージシャンたちが音楽を生み出す人間ドラマとして描いているのだ。それがこのライブの感動的な側面であり、この映画が時を超えて観客の胸を打つ理由なのだ。 クリス・フランツ:デミは人間を描く才能を持った監督だった。ステージに立つミュージシャン一人ひとりの魅力を見抜くことができたんだ。デミはエキセントリックな人物が好きだったけど、ミュージシャンは変わった人間が多いから、彼はとても喜んでいたよ(笑)。 ティナ・ウェイマス:スパイク・リーはこの映画を観て「愛を感じた」と言っていた。ロックバンドの場合、コンサートではいかに自分たちがカッコいいかを見せつけようとするけれど、私たちは愛を表現したんだと思う。ちょっとオタクっぽいやり方でね(笑)。 『ストップ・メイキング・センス』はロックコンサートの可能性だけではなく、音楽に対する愛を描いた。『アメリカン・ユートピア』では、さらに物語性やメッセージが明確になり、それが音楽(パフォーマンス)と強く結びついていく。その点、『ストップ・メイキング・センス』は荒削りで無邪気なところがあるが、そこには新しい音楽/表現に向かおうとするバンドのみずみずしい姿が刻み込まれていて、その熱気と高揚感はいまも失われていない。 考え抜かれた映画的な手法で独創的なライブのエッセンスを見事に捉えた本作の魅力は、これからも再発見され続けていくだろう。
インタビュー・テキスト by 村尾泰郎 / 編集 by 後藤美波