『ストップ・メイキング・センス』をTalking Headsの4人が語る。「愛を表現した」40年前のライブが蘇る
アフロビートとロックの融合。「共感力」をもたらしたバンドメンバーたちとのアンサンブル
そして、余計なことを考えず、「Stop Making Sense」な状態で音楽の心地よいグルーヴに身を任せよう、というのも、このライブのテーマだ。 サポートメンバーにはバーニー・ウォーレル(Key)、アレックス・ウィアー(Gt)、スティーヴ・スケールズ(Per)など、R&B/ファンクシーンで活躍するアフリカ系アメリカ人のミュージシャンが参加。Talking Headsは『Remain In Light』(1980年)でアフロビートを大胆な手法で取り入れて以来、アフリカ音楽、ファンク、R&Bなどさまざまなグルーヴを吸収して独自のサウンドを生み出してきた。そこで彼らのアルバムやツアーに参加してバンドを支えたのが、『ストップ・メイキング・センス』に参加した面々だった。 いまではロックがダンスミュージックのグルーヴを取り入れることに違和感はなくなったが、当時、特にアメリカでは軟派な行為として嫌われたし、評論家筋からは黒人音楽の文化的な搾取だと攻撃された。しかし、映画を観ればバンドとサポートメンバーがお互いに刺激を与えながら演奏していることがわかる。彼らは横一列に並び、同等の関係でアンサンブルを生み出している。それはジャズのセッションのようでもあり、そのユニークなアンサンブルが『ストップ・メイキング・センス』の音楽面における最も先鋭的なところかもしれない。 ティナ・ウェイマス:参加してくれたミュージシャンはみんな素晴らしかった! スティーヴはアフリカ音楽を思わせる力強いビートを持ち込んでくれたし、アレックスはダイナモのような存在でライブの推進力になってくれた。この2人にはTom Tom Clubの作品にも参加してもらったけど、彼らがライブにもたらしてくれたのは「共感力」と言えるかもしれない。 映画からは私たちがお互いに共感しながら演奏していることが伝わってくるし、プレイヤーがどんな気持ちで楽器を弾いているのかもわかる。デミがそういう感情を捉えることができたのが、この映画が成功した理由だと思う。 ジェリー・ハリスン:そうだね。見直すたびに印象に残るのは、ミュージシャンの関係が伝わるショットなんだ。ああ、ここでバーニーとアレックスがアイコンタクトをとっているぞ、とかね。注意して観ていないと気づかないことも多いけど、デミはそういう人のつながりを描こうとしていたんだと思う。