「小池vs蓮舫」の都知事選にどうにもワクワク感が湧いてこない理由
(朝比奈 一郎:青山社中筆頭代表・CEO) ■ 高揚感無き「女性候補同士による事実上の一騎打ち」 【写真】2016年には、小池百合子知事と笑顔で写真撮影に応じていた蓮舫氏 6月12日、東京都の小池百合子知事が、来月7日投開票の東京都知事選挙への立候補を表明しました。これで今回の都知事選は、先に出馬表明していた参議院議員の蓮舫さんと小池さんという女性同士の戦いを軸とし、そこに他の候補者がどうからむかという構図になりそうです。 都知事選が、事実上、女性候補同士の一騎打ちになるというのは、史上初のことです。保守的な日本において、ついに首都の首長のポストを女性候補同士が争うことにまでなったということを考えると、今回の都知事選は大きな歴史の転換点といえそうです。 それだけ画期的な事態なのですが、なぜか都民の高揚感はいまひとつのように感じます。いや、率直に言えば私自身、この小池vs蓮舫の構図に、あまりワクワクしないのです。その理由を考えてみたいと思います。 一つには、あくまで現時点まででの経過を見る限り、政治が「PR合戦」の様相を呈しているからだと思います。 6月12日に小池さんが出馬表明をする前までは、連日、蓮舫さんの動静が注目を浴びていました。それは蓮舫さんが自らに注目が集まるよう、タイミングを読んだうえで出馬表明したからです。
当初、3選に向けて出馬が確実視されていた小池さんは、都議会の定例会が始まる5月29日に出馬表明するのではないかと見られ、メディアも注目していました。それを察知した蓮舫さんは、おそらく小池さんの出ばなをくじこうとしたのでしょう。小池さんの出馬表明が予想された29日の2日前となる27日に出馬表明したのです。 しっかり準備を整えいつでも名乗りをあげられる態勢を作っておいて、ドンピシャのタイミングで発表したということでしょう。これはタイミング的には実に見事でPR効果は抜群でした。 ■ タイミングの読み合い 事実、「小池氏出馬表明」を待っていたメディアは蓮舫さんの発表を受け、「小池vs蓮舫」の構図をクローズアップし、蓮舫さんは都知事選という戦いのドラマの一方の主人公に躍り出ることに成功したのです。武道で言うところの「後の先」(相手の技が繰り出されるのを見計らってそのさらに先手をとる)を取ったというところでしょうか。 片や小池さんは、仕切り直しをせざるを得ませんでした。蓮舫さんが先手をとって作り出した土俵に乗っていくのをよしとしなかったのでしょう。じっくりタイミングをみて、「蓮舫氏出馬」に一瞬高揚したメディアのトーンが落ち着くのを見計らって、都議会が閉会する6月12日に出馬表明したというわけです。 このように発表のタイミングを読み合い、いかに自分に世間の注目を集めるかという2人の駆け引きに注目するならば、なかなか味わい深い攻防ではありますが、候補者に票を投じる都民の立場として見れば、そんな駆け引きより大事なことがあるはずです。 肝心かなめのこと、すなわち、2人とも都知事になってなにをしようとしているのか、まだ分かりません。2人とも公約を表明していないからです。