「ポストSDGs」のヒントはギリシャの「サステナブル・ツーリズム」に学べ
■グリーン・デスティネーションズ
ちなみに、これまでの「グリーン・デスティネーションズ」選定のトップ100(2014年から実施)には日本の街も多く選定されている。京都や白川郷をはじめとして選定され、2022では、阿蘇市、下呂温泉町、箱根町、東松島市、岩手県釜石、南知多町、那須塩原市、小国町、愛媛県大洲市、小豆島町などが選定されている。 グリーン・デスティネーションズ認証には、「観光地マネージメント」「自然と景観」「環境と気候変動」「文化と伝統」「社会福祉」「ビジネスとホスピタリティ」など合計100項目の評価基準が設定されており、今後のヒントになる。
■島の観光と食の無形文化遺産
エーゲ海には特色ある島々があり、特にロードス島やティロス島、サントリーニ島が注目されている。ロードス島では、サステナブル・ツーリズムのための研究所「The Rhodes Co-Lab」が設立され、ティロス島は「廃棄物ゼロの島」としてサーキュラー・エコノミーを推進している。 サントリーニ島は、伝統的集落保全と観光開発が進められ、世界屈指のアイランド・リゾートとして人気を博している。ヨーロッパ最古の文明ともいわれるエーゲ文明発祥の地であり、古くから海上交通の要衝として栄えてきた島である。 紀元前16世紀に島内火山の大爆発によって現在のようなカルデラ状の地形が形成され、特に「イア」という伝統的集落では、19世紀につくられた「洞窟住居群」が、見事な景観を形成している。観光での人気の高い島で、特に美しい街並みと夕日が有名だ。 この美しい島は1970年代あたりには荒廃し過疎化も進んだが、ギリシャ政府が1978年11月に「伝統的集落法」を定め、伝統的集落保全と観光開発を進めた。今では、世界屈指のアイランド・リゾートとして圧倒的な人気を誇り、日本からのツアーでも定番にもなっている。 食のみならず、サントリーニでは良質な白ワインにも力を入れている。サステナブル・ツーリズムでは食文化も重要である。ユネスコの無形文化遺産に登録された「和食」は、自然を尊ぶ日本人の気質に基づいた食文化として評価されている。 一方、ギリシャを含む「地中海料理」が複数国で共通に登録されており、オリーブオイルや野菜、魚を中心とした健康的な食生活が特徴である。これらの食文化は、コミュニティ形成や家族の健康を重視したものであり、観光地の魅力を高めている。 これは住民のみならず旅行者のwell-beingにとって重要な要素を提供する。 サステナブル・ツーリズムは、SDGs目標11「住み続けられるまちづくりを」をはじめとして、目標8「働きがいも経済成長も」の中の持続可能な経済成長、すべての人が働きがいと十分な収入を得ることのほか、各種環境関連の目標が関係する。このような複合課題への対応によるwell-beingの追求は、ポストSDGsの重要な要素の一つであろう。