「ポストSDGs」のヒントはギリシャの「サステナブル・ツーリズム」に学べ
■日本と世界の先進事例から学ぶ
2030年のSDGs達成期限が迫る中、「ポストSDGs」に向けた新たな取り組みが求められている。気候変動、社会的不平等、デジタル化の進展、国際協力の必要性といった課題を中心に、各地域や企業がどのようにして持続可能な発展を続けるかを探求することになる。 特に注目すべきは、企業の創造性とイノベーション力が「ポストSDGs」において果たす役割である。SDGsの17目標ではカバーしきれない部分を補完し、日本発で新たな目標を提案することで、国際社会に貢献する道を模索すべきだ。 筆者はこれまで、17目標と169のターゲットはいわば「規定演技」であり、それではカバーできない部分を「自由演技」として構想すべきだといってきた。 日本の強みを浮き彫りにするため、世界各地の先進的な取り組みからもヒントを探り、日本ならではのアプローチや技術を活かした解決策を見出すことで、より効果的な持続可能な発展を実現する。 本連載では今後数回にわたり、持続可能な社会の実現に向けた具体的な事例を提示し、読者と共に「ポストSDGs」を考察していきたい。
■ギリシャから学ぶサステナブル・ツーリズム
最近、欧州を訪れ、初めてギリシャに足を運んだ。特に最近インバウンドの盛り上がりで話題の「サステナブル・ツーリズム」の観点からヒントが多かった。 アテネの中心には「アゴラ」の遺跡があり、これは2500年以上前の古典時代にアクロポリスの下に作られたものである。アゴラは「広場、市場」を意味し、市民交流の場であった。この地区は1980年代に荒廃したが、再開発を通じて多文化共生社会の構築が進み、持続可能な観光地として再生した。 このことが評価され、持続可能な観光地の国際的な認証団体 「グリーン・デスティネーションズ」が、ちょうどアテネで2022年に開催したカンファレンス「グリーン・デスティネーション2022」の会場で「トップ100デスティネーションストーリー」の受賞地を発表した際にアテネも選ばれた。 (詳しくは、グリーン・デスティネーションズのサイト) 最近では、アゴラ地区の「キプセリ」と呼ばれるエリアには多くの劇場もあり活気がある観光地になっている。かつて財政危機に落ち入ったギリシャは、今では観光を一つの軸として大きく持ち直しているという印象を持った。 ギリシャ大使だった清水康弘氏(元環境省)とは米国大使館で一緒に仕事をしたが、彼によれば、ギリシャは、アテネのヨーロッパ文明の発祥の地であり、現在の西洋文明の源流とみなされている。やはりプラトンやアリストテレスは現在の知識人の教養の一部であり、世界に最初に民主主義を生んだ国でもある(清水康弘著「魅惑のギリシャ―清水大使の案内記―」より)。 思えば、世界遺産の登録を行うユネスコ(国際連合教育科学文化機関、United Nations Educational, Scientific and Cultural Organization U.N.E.S.C.O.)のロゴは古代ギリシャを代表するパルテノン宮殿をかたどったものだ。