<春に輝け>東海大相模の挑戦 ’20センバツ 万全な状態、サポート 整骨院勤務のトレーナー /神奈川
◇選手の「違和感」見逃さず 第92回選抜高校野球大会(毎日新聞社、日本高校野球連盟主催)に出場する東海大相模の野球部は19日の開幕に向け、全力で練習に取り組んでいる。本番直前、最も怖いのはけがだ。同高近くにある整骨院のスタッフの市川拓磨さん(28)らは、選手らが万全のコンディションで大会を迎えられるようにアドバイスを欠かさず、グラウンド内外でチームを見守っている。【池田直】 【動画】センバツ出場校、秋季大会熱闘の軌跡 市川さんが勤務しているのは東海大相模から500メートルほどの場所にある「さがみが丘整骨院」。院長の渡部真弘さん(37)は、東海大相模の専属トレーナーを務めていた2013年、「部員のけがを現場にいるのと同じくらいすぐに診察できる」と考え、この場所で開業した。 渡部さんがトレーナーになったきっかけは、東海大相模の主将を務めた友人から、門馬敬治監督を紹介されたことだった。06年ごろから、調子の悪い部員のサポートに入るようになった。08年からは専属のトレーナーとして練習にも同行するようになったという。 18年からは渡部さんに代わり、市川さんがグラウンド練習に立ち会うようになった。週末や祝日の練習で、朝のストレッチや体幹トレーニング、ウオーミングアップの指導をしている。 市川さんは、選手の基本的な動作を見て、調子の変化を探る。キャッチボールで腕や肘をかばって投げるような仕草はないか。バッティングフォームが不自然ではないか。そこに「違和感」を感じれば、痛みの有無を確認し、治療が必要かも判断する。 同様に、選手の練習風景を見ていた渡部さんは「選手は基本的に『けがしている』『痛いところがある』とは言いたがらない」と話す。選手らの誰もが、試合に出たいと強く願っている。それだけに「不調を隠してしまう部員はいる」という。中には、痛いのが普通で、痛くないのはちゃんと体を使えていないから、と思い込む部員もいるという。渡部さんや市川さんは、エコー検査の結果などを示しながら繰り返し説明し、選手の意識を変えようと努めている。 選手との関係性も重視している。門馬監督や他の部員にも、できるなら知られたくないことも聞くことがある。だからこそ、何気ない会話の中から、選手それぞれの性格を把握しようと心がけている。部員が素直に自分の体のことを打ち明けようと思うのは、信頼があってこそ。部員からは、けがのことだけでなく悩みを相談されることも少なくない。 「けがの疑いがあったとしても、練習を続けられるか休ませるべきかというラインを引くのは難しい」(渡部さん)。練習を続けるのかどうかの判断は選手に委ねる。そのために、判断に必要な説明は欠かさず、選択の道しるべを示すことを心掛けている。部員の将来と今の健康状態のはざまで毎回悩むという市川さんは「センバツ本番まで残りわずかとなった今の時期、けがをしそうな部位を見つけ、けがにつながらないようにすることを意識している」と話す。 2月中旬。足首が腫れた選手が、さがみが丘整骨院を訪れていた。処置を終え、同院を後にする部員に市川さんは「また、おいで」と声をかけた。夏の甲子園、秋の関東地区大会はともに、守備のほころびから大量得点を許すという悔いの残る負け方で大会から姿を消した東海大相模。2人は「悔しい思いから、熱心に練習しているのは見ている。より万全な状態でプレーできるようにサポートし、みんなにとって良い大会にしたい」と願う。