「コンビニでお菓子を凝視し、食べた気に…」引退から2年、寺本明日香が明かす“食事制限に苦しんだ現役時代”「気合と根性で乗り切っていた」
正門から坂をのぼった先の体育館で、彼女はジャージをまとって待っていた。 「肩書きとしては、助教と体操競技部の女子監督兼コーチです」 【写真】身長142センチ、かつて「天才少女」と呼ばれた寺本明日香さんの現在(28歳)の姿。現役最後の演技に、流した涙。オリンピックでの活躍写真も。この記事の写真を見る。 穏やかな笑顔で語るのは寺本明日香だ。日本体操女子の主軸として約10年にわたり活躍し、2022年4月の全日本選手権をもって競技生活から退いた。その後は、指導者としての道を歩んでいる。 女子体操界を牽引し、今も体操界で活躍を続ける寺本に、あらためて現役時代について、引退を決意した経緯、指導者としての思いなどを尋ねた。《NumberWebインタビューの第1回/後編に続く》 ◆◆◆
明かした思い「嫌いになりそうでした。体操が」
寺本明日香の競技人生は輝かしい成績に彩られている。2012年ロンドン、2016年リオデジャネイロと2度オリンピックに出場し、リオの団体では4位、個人総合では日本女子52年ぶりの入賞となる8位の成績を残している。 そしてオリンピックだけでなく、日本が危機に陥るたびに救ってきたのが寺本だ。2011年、高校1年生で初めて世界選手権代表に選出されると、女子団体予選の直前練習で負傷した選手にかわって出場、チームトップタイの得点をあげて見事にピンチヒッターの重責を果たし脚光を浴びた。リオの出場権をかけた2015年世界選手権、東京五輪の出場権をかけた2019年世界選手権では主将を担った。しかも2019年は村上茉愛が負傷により団体メンバーから外れる中、全4種目中3種目で日本勢トップの得点をあげて出場権獲得の原動力となった。 そんな寺本は、第一線で活躍を続けた選手時代を振り返る中で、ふとつぶやいた。 「嫌いになりそうでした。体操が。無理やりやっている感覚だったので」
怪我に苦しんだ現役時代
葛藤をもたらすきっかけは、2020年に負った左足アキレス腱断裂にあった。懸命の治療とリハビリを経て復帰したが、東京五輪代表にはわずかに届かなかった。 ただ、左アキレス腱よりむしろ右足に長く苦しんできたという。 「アキレス腱を切る前はずっと右足の方が悪かったんですよ。『左足アキレス腱断裂』と大きく報道されたから、そのイメージが世間的にあると思うんですけど、実際には右足の外反母趾と足首がずっと痛かったですね。なので右足と左足を2:8のバランスでずっと蹴っていたら反対の足のアキレス腱を切ったんです」 東京五輪の選考会に間に合わせるためには最終手段もとった。 「アキレス腱を切ってから、体操ができない状況が半年続きました。その間に右足も治った感じだったんですけど、オリンピックの選考会前ぐらいにまた外反母趾がすごく痛みだして。指で踏み込むときに踏み込めなくなったのでステロイドの注射を親指のところに打ちました。ドクターから『あまり打たない方がいい、打つと組織が弱くなるから、その後に影響がある』と言われました。でもそんなこと言ってられないし、東京オリンピックが最後だからと言って、2回打ったんですよ」
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