「合成樹脂をうまく使った機能主義的なインテリアのデザインは最高!」by 小川フミオ これがフォルクスワーゲンID.4ライトに試乗したモータージャーナリストの本音だ!
EVだからこそ開拓できた境地!
今年もやりました「エンジン・ガイシャ大試乗会」。2024年、大磯大駐車場に集めた注目の輸入車36台にモータージャーナリスト36人が試乗! 先祖帰りしてRRで登場した最新のEVワーゲン、ID.4に乗った飯田裕子さん、小川フミオさん、田中誠司さんの本音やいかに? 【写真8枚】現代に甦った国民車、RRのEVワーゲン、フォルクスワーゲンID.4の詳細画像を見る ◆「ビートルにも通じる実用車へのこだわり」飯田裕子 2022年11月に日本導入されたVW ID.4。私はこのID.4を初試乗したときから、VWの国民車構想(1934年)にも通ずる“実用車”へのこだわりが感じられ、かつての初代ビートルとは色々違うけれど、ID.4のVWらしさにホッコリしたのだった。 床下にバッテリーを敷く後輪駆動のID.4は大型SUV並みの広い室内空間が得られ、比較的小回りも得意。 またハンドリングも前輪駆動のゴルフのスムーズさとも異なり、BEV+後輪駆動のID.4は加速性能に優れ、フロントが軽く低重心でフラット。ライン・トレースが楽で、スイスイ、キビキビぶりは運転のし易さに繋がる。 ダッシュボードの実際の奥行きの物理的な長さをデザインで感じさせない(車輌感覚の善し悪しに響く)テクニックも実は素晴らしい。 航続距離を618kmに延ばした上位グレードはプロ、普及グレードは435kmのライト。BEVの価格は割高な印象があるし他ブランドにはより廉価なモデルもあるけれど、ライトはゴルフGTIとほぼ同価格(514万円)。充電&走行実用性が合えばVWのBEVという選択肢もアリ。 ◆「知的という評価がよく似合う」小川フミオ どんどん進化している、というのがID.4の印象です。 今回特筆したいのは、乗り心地がうんとよくなったこと。導入時のモデルは、足まわりがちょっとドタバタしていて、路面のうねりの影響を受けがちでした。最新のID.4はけっこう落ち着いた乗り味に。私は2023年秋にドイツで改良されたID.4に乗って感心しましたが、それとおんなじ印象です。低重心でカーブを曲がるときも安定的。 トルクもたっぷりあって、乗りやすさが身上です。本国では“IQ.DRIVE”っていうほとんど自動運転の機能もあってすごいんですが、日本では認可されていません。 もう1つ、私がID.4で好きな点は、インテリアの仕上げ。デザインと素材選びで質感を追求しています。とりわけダッシュボードのシンプルな造型感覚は最高。レザーやウッドなど古典的な素材で高級感を出すのでなく、合成樹脂をうまく使った機能主義的なデザイン。ジャーマン・デザインの真骨頂とされる、ディーター・ラムスがディレクターを務めていた時代のブラウンを彷彿させます。知的という評価がよく似合うクルマ。そうそうありません。 ◆「EVだからこそ開拓できた境地」田中誠司 リアエンジン・リアドライブ(RR)のビートルことタイプIから、フロントエンジン・フロントドライブ(FF)のゴルフへ一気にシフトして世界の実用車のスタンダードとなったVWは、電気自動車のID.4でふたたびRRへ転じて世界を驚かせた。 ディーゼル車をめぐる不正問題を経てなんとなく元気のなかったVWだが、EV専用プラットフォームMEBには彼らが蓄えた巨大な熱量が注ぎ込まれている。 大きな発進トルクを後輪で受け止め、居住スペースを前方に拡大するパッケージングの大転換を図った車体は、並外れて強固な印象を操る者に与える。 小回りも得意だ。EVだからこそ開拓できた境地がそこにある。ID.4ライトはバッテリー容量とモーター出力、装備レベルを絞り込み、上級グレードのプロより2割ほど低い価格を実現。車重も1割ほど軽く、加速力は日常用途であれば充分だ。ホイール・サイズが小型化され、乗り心地が良いのも好ましい。 けれどID.4が全体にきわめて高い完成度を誇るモデルであるだけに、自分なら控えめ性能のライトでは我慢できず、プロに行ってしまいそうだ。 写真=小林俊樹(メイン)/郡 大二郎(サブ) (ENGINE2024年4月号)
ENGINE編集部
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