暑さが止まらない…世界平均気温が12カ月連続で過去最高更新
1.5度超えの意味
パリ協定の「2度を大きく下回って1.5度未満」という目標を、昨年6月から11カ月連続で突破中ですが、あくまでもまだ「一時的に」超えただけで、パリ協定の+1.5度目標達成に失敗したわけでも、不可能になったわけでもありません。5年から10年くらい安定して+1.5度を超えて、初めて「+1.5度目標大ピンチ」となります。 なぜ「終わった」じゃなく「大ピンチ」なのかというと、そもそも+1.5度を一時的に超えるのは織り込み済みなんですね。現時点でパリ協定に合意している各国が自主的に定めている目標をすべて達成しても、2100年までの気温上昇は+2.5度を超える見込みです。 目標を超えるのを「オーバーシュート」と呼ぶのですが、オーバーシュートしてからどれくらい早期に+1.5度未満まで気温を下げるかによって、将来的な気候変動の影響は大きく左右されます。 +1.5度を超えないまま目標を達成できると考える専門家はほとんどいないはずです(科学的に不可能ではないけど、実現はかなり困難)。でも、一時的にオーバーシュートしても、2100年までに+1.5度未満まで戻せると考える専門家はかなり多いと思われます。 なので、「パリ協定の1.5度目標終わった」と決めつけるにはまだ早いです。それに、1.5度は目安として目標にしている数字です。目標は常に次の0.1度上昇を抑える、です。
気候変動対策あるのみ
平均気温の上昇に伴って、各地で熱波や干ばつ、山火事、集中豪雨、洪水、土砂崩れなどの気象災害の激甚化と頻発化が懸念されます。長期的な気温上昇の影響に目が行きがちですが、極端な暑さに脆弱(ぜいじゃく)な人や生態系を守るためにも、一刻も早い野心的な気候変動対策の実施が望まれます。早ければ早いほど、温暖化の影響を小さくできます。 再生可能エネルギー導入の加速、大気からの二酸化炭素回収・貯留(回収した炭素を化石燃料掘削に再利用しない方)、最悪の場合は気候ハック (ジオ・エンジニアリング)を駆使してでも、ネットゼロ(排出量と吸収量がプラマイゼロになる)と脱化石燃料を早急に達成しなければなりません。そして、自然(海や土壌、森林など)の力を借りながら二酸化炭素濃度を下げれば、気温は+1.5度未満に向かって下がっていきます。 もしも野心的な気候変動対策を迅速に実施できなければ、昨年から今年にかけてのとんでもない暑さが、遠くない未来では「涼しめの年」になってしまうでしょう。 昨年は気候科学者の想像を超える暑さでした。今のところ、今年はサプライズなしで世界平均気温は順調に下がっています。もしも今後サプライズがあるとすれば、とんでもない暑さだった昨年の夏を超えてしまうこと。そうなると、2年連続で「気候科学者が説明できない暑さ」になってしまいます。 まずは、6月も過去最高になるのかどうか、固唾(かたず)を飲んで見守ります。 Source: Copernicus Reference: The Conversation, NOAA Climate.gov, The Washington Post, Copernicus (1, 2), Climate Central, WMO
Kenji P. Miyajima