北村一輝が醸し出す、唯一無二の“二面性” 『わたしの宝物』と『地面師たち』のギャップ
『陰陽師0』『身代わり忠臣蔵』など、キーパーソン役が多かった2024年
さらに北村は、2024年において多くの映画で重要な鍵を握るキャラクターを務めた。ムロツヨシ主演映画『身代わり忠臣蔵』では第5代将軍・徳川綱吉として運命を決める重要なシーンに登場し、『カラオケ行こ!』ではカラオケ好きな組長として『地面師たち』とは違った恐怖を視聴者に植え付けた。 また、富裕層の義父母を殺した婿養子・東昇(岡田将生)と、彼の殺害現場を偶然動画に撮っていた貧困世帯の子どもたち3人の駆け引きを描いた『ゴールド・ボーイ』では、子どものうちの一人、朝陽(羽村仁成)の父親・一平役を演じた。といっても、朝陽の母(黒木華)とは離婚し、別の女性と再婚している役柄だ。そんな中で朝陽は、一平の現在の妻から、自殺した娘を本当は殺したのでは? と思われており、この複雑な状況下で朝陽が下す決断と父親としての存り方が物語にとって重要になっていく。同じ父親でも『366日』とはまた違う顔を見せているのが印象的だった。 そして天文博士・惟宗是邦を演じた『陰陽師0』でもキーパーソンに。2024年に出演した作品の中でも、特にわかりやすく嫌な奴だ。怠け者なのに実力のある安倍晴明(山﨑賢人)のことをあまり良く思っておらず、その嫉妬と欲が陰陽寮を襲う大きな出来事の発端となる。 『カラオケ行こ!』や『地面師たち』のようなインパクトの強い役柄から、『陰陽師0』のような歴史もの、『366日』『ゴールド・ボーイ』のような等身大の父親役、『身代わり忠臣蔵』のようなコメディ、そして『わたしの宝物』のような一歩引いた立ち位置のキャラクターまで、北村は自身の存在感はそのままに確実な味を出してくれた。その他にも2024年は『王様と私』でミュージカル初出演を果たし、2025年には『室町無頼』の公開も控えている。底知れない奥深さを放つ俳優・北村一輝の演技。2025年以降のさらなる活躍も期待したい。
伊藤万弥乃