バンダイナムコ、赤字から復活→売上高1兆円を突破した老舗おもちゃメーカーの「すごい戦略」
変化の激しいエンタメ業界で、老舗おもちゃメーカーのバンダイナムコが進化を遂げています。長年培ってきたキャラクター(IP)のプロデュース力を生かし、アニメやゲーム、グッズなど多彩な分野で展開を拡大。IPを軸に、時代を超えて成長を続けるその戦略に迫ります。(グロービス講師/グロービスAI経営教育研究所 マネージャ 松村真美子) 【この記事の画像を見る】 ● バンダイナムコが売上高1兆円超え! 絶好調の背景にある「戦略」とは? 『マジンガーZ』『仮面ライダー』『機動戦士ガンダム』――子どもの頃にこれらのキャラクター玩具で遊んだ記憶のある方も多いのではないでしょうか。バンダイナムコの商品には、長年愛されるキャラクターがたくさん登場します。 ここ数年、バンダイナムコの業績は非常に好調です。2020年から24年にかけてのCAGR(年平均成長率)は約9.7%に達し、24年3月期の売上高は1兆502億円と過去最高を記録しました。 同グループでは400種類以上のキャラクターを取り扱っていますが、特に「ガンダム」、「ドラゴンボール」、「ワンピース」はそれぞれ売り上げ1000億円を超え(24年3月期)、3本柱として業績を牽引しています。中でも「ガンダム」シリーズは、プラモデル(ガンプラ)の海外売上高比率が約50%に達するなど海外でも人気を博し、売上高が4年前の実績と比べて187%と、大きく成長しています。 「ガンダム」だけでなく、「ドラゴンボール」や「ワンピース」もゲームやトレーディングカード、フィギュアなどで安定的な収益を生んでいます。 「ガンダム」はバンダイナムコグループが保有する自社IPですが、「ドラゴンボール」や「ワンピース」は、バンダイナムコが版権元からライセンスを得てゲーム化や商品化を行っている他社IPです。
IP(Intellectual Property:知的財産)とは、創造的な活動によって生み出されるアイディアや創作物全般を指しますが、特に、アニメ、漫画、ゲームなどのキャラクターは「キャラクターIP」と呼ばれ、グッズやイベント、デジタルコンテンツなどでさまざまなコラボレーションビジネスが展開されています。バンダイナムコは自社IP、他社IPを含めて総合的なIPプロデュースを行っています。 以下は、バンダイナムコグループが扱うIP別の売上高です。 バンダイナムコの他にも、任天堂やサンリオなど強いコンテンツを持つ企業は沢山ありますが、ここまで明示的にIPごとの売り上げを公開しているところはありません(一部、コンテンツの法人化や、作品タイトル別の公開をしているところは存在します)。このIP別の売上高リストは、バンダイナムコが提唱する「IP軸戦略」を象徴しているといえます。 「IP軸戦略」とはどのような戦略なのでしょうか。 ● 歴史に裏打ちされた「IP軸戦略」 組織もIP中心の体制へ バンダイナムコによれば「IP軸戦略」とは、「IPの世界観や特性を活かし、最適なタイミングで、最適な商品・サービスとして、最適な地域に向けて提供することにより、IP価値の最大化をはかる」ことです。 なぜ同社はここまでIPにこだわるのか。その理由の一つは歴史的背景に見ることができそうです。 1950年に創業したバンダイ(当時は萬代屋)が、ナムコと経営統合し、バンダイナムコとなったのが2005年のこと。それ以前のバンダイは、キャラクター商品を得意とする玩具メーカーでした。1970年代の「仮面ライダー変身ベルト」や「超合金マジンガーZ」、1980年代の「ガンプラ」、1990年代の「たまごっち」など数々の大ヒットを生み出してきたことはよく知られています。