バンダイナムコ、赤字から復活→売上高1兆円を突破した老舗おもちゃメーカーの「すごい戦略」
ヒット商品の印象が強い同社ですが、一方で、商品化はしたものの商業的に成功しなかったケースもあるといいます。1980年ごろから同社は映像や音楽制作、ゲーム開発といった事業に参入していますが、この多角化は事業の幅を広げるだけでなく、当たり外れの大きいキャラクター玩具事業の安定化を図る目的もあったと考えられます。 その後、高性能家庭用ゲーム機の登場などで業界再編が進む中、バンダイはナムコと合併(2005年)。ナムコはアミューズメント施設運営やゲーム開発を得意としており、トイホビー(玩具)に強みを持つバンダイとは相補関係にあると考えられていました。さらに、ナムコは「パックマン」や「鉄拳」といったオリジナルキャラクターも持っていました。 シナジーを期待された新会社ですが、ゲームコンテンツ事業の不調などを背景に、2010年に赤字に転落してしまいます。 そのときに打ち出されたのが、「IP軸戦略」です。変化する市場への対応に苦慮する中で着目したのが、両者共通の価値であるIP(キャラクター)でした。グループ内の強みを見直し、IPを最大化する戦略に舵(かじ)を切ったのです。2013年には、従来の商品・サービス別の組織から主要IPごとにプロデューサーを設置するIP軸の組織に移行し、その後は現在に至るまで、IPを軸としたコンテンツ価値の最大化を推進しています。 ● VRIO分析の視点から見る バンダイナムコの競争優位性 「IP軸戦略」が成功を収めているのは冒頭で見た通りですが、成功の要因は何だったか、少し整理してみましょう。 JB.バーニー教授が提唱した、「VRIO」というフレームワークがあります。「VRIO」は、「RBV(リソース・ベースト・ビュー)」の考え方に基づき、組織が保有する内部資源がどのくらい競争優位を持つかを評価するものです。 VRIO分析には「経済価値(Value)」「希少性(Rarity)」「模倣困難性(Imitability)」「組織(Organization)」の4つの要素を用います。