「まるで真横に吹っ飛びそうな驚きの回頭性」 モータージャーナリストの武田公実がBMW XMほか5台の注目輸入車に試乗!
将来への期待感を持たせる“元気の種子”
モータージャーナリストの武田公実さんがエンジン大試乗会で試乗した5台のガイ車がこれ! BMW XM、BYDドルフィン、キャデラック・エスカレード、ヒョンデ・コナ 、ボルボXC40リチャージに乗った本音とは? 【写真22枚】モータージャーナリストの武田公実さんがエンジン大試乗会で乗った5台の注目輸入車の写真を見る ◆BEVは“元気の種子” 元日に北陸地方を襲った痛ましい震災から連想してしまったこともあるが“ガイシャ”と“元気”といえば真っ先に思い出したのが、13年前の東日本大震災と当時の愛車アルファ・ロメオ147。あのとき筆者の住む地域は、液状化現象によりライフラインが長期間にわたり途絶えてしまった。そこで生活物資の確保、あるいは入浴などの支援を受けるため、当時のアシ車である147とともに、液状化で路面が盛り上がった近隣の道を連日走り回ることになったのだが、アルファ生来の楽しさに気持ちが大いに救われたことを記憶している。 そんな懐古志向の筆者に、クルマの神様がお灸でも据えようとしたのか、今回の大試乗会で担当させていただいた5台の“ガイシャ”のうち3台が、実用系のBEV。旧来の価値観による“元気”とは遠いキャラかと思いきや、それぞれ将来への期待感を持たせる“元気の種子”のように感じられた。 ◆BMW XM「まぎれもない“M”」 伝説のミドシップスーパーカー “M1”に次ぐ、史上第二の “M” 専用モデル。ただ、もはや定番の一つとなったSUV様式で、しかもPHEVながら、やはり“M”は“M”。システム総出力653psのもたらす走りは、クールに熱い。そして48Vアンチロールバーのおかげか、コーナーにおいてもロールはほとんど見せず、まるで真横に吹っ飛びそうな回頭性をもって、巨大な体躯を感じさせないフットワークを披露する。これはやはり、まぎれもない “M” なのであろう。 そしてXMとのドライブを続けているうちに、余人から嫌われることを恐れない強烈なボディ・デザインや、BMW門外漢にはとっつきにくい各種設定スイッチの操作でアタフタしてしまうことさえも、ある種の「通過儀礼」であるかのように感じられてきた。 自分自身が元気ハツラツな時には、気持ちをさらに引き上げてくれる最高の相棒となる。でも、そうでない時にはクルマに負けてしまいそうにもなる。この恐るべき“M”と真っ向から向き合うには、強靭な精神力と自己肯定力が必要とさえ感じたのである。 ◆BYDドルフィン「元気はホンモノ」 現時点では自動車やライフスタイル系メディアよりも、経済誌などで見かける機会の多いBYD。でも同時に、世界で最も元気な自動車ブランドの一つであることに疑う余地はあるまい。昨年試乗の機会を得た「ATTO3」でも、予想外のできばえに目を瞠ったが、今回乗せていただいた「ドルフィン」は、さらに上をゆく仕上がりだったと太鼓判を押したい。 まだ乗用車の経験は豊富とは言えないのに、たとえば今回乗ったロングレンジ版のマルチリンク式の後脚は、高速でも一般道でも快適さを損なわない足さばきを見せる。あるいは内外装のつくりの良さも、筆者の意地の悪い予想を遥かに上回るもの。ただ、触れて乗って、あるいは日常的に使用して「元気になる」というよりは、ひたすら感心してしまう段階にある。 レーンキープ・アシストが気まぐれで、しかも強力過ぎる。発進時および停まる寸前に発生する擬似サウンドのON/OFFが唐突であることなど、重箱の隅を突けば気になる点も皆無ではないのだが、それでもBYDの元気はホンモノと実感させてくれたのだ。 ◆キャデラック・エスカレード「全席が快適!」 ショーファードリヴン用途に供するSUVは、現在ではR-Rカリナンやベントレー・ベンテイガ、そして日本からもトヨタ・センチュリーなどが誕生しているものの、その起源はエスカレードにあると思われる。今回はEPC会員のご夫妻のアテンド役も兼ねての試乗で、助手席と後席でもエスカレードを体感していただいたのだが、すり減った元気を取り戻してくれるような、カッチリし過ぎないインテリアの設え。ベンテイガはもちろん、カリナンよりも鷹揚な乗り心地など、すべてが癒しのクルマであることを共有できた。でも、スロットルを深めに踏み込むと聴こえてくる、コルベットやカマロと同じLS系のV8サウンドや、自然吸気ならではのレスポンスは、この上なくスウィート。高級車キャデラックには相応しくないとは分かっていても、このクルマのフィールが乗り手に極上の「元気」をもたらしてくれることは間違いあるまい。しかも、それは運転席だけでなく、助手席や後席でも等しく体感できるものであることも重要。それはおそらく、エスカレードだけの稀有な資質なのだ。 ◆ヒョンデ・コナ・ラウンジ2トーン「気持ちがアガる外観」 初代コナは、かつてランボルギーニのチーフ・スタイリストだったルカ・ドンカーヴォルケ氏(現ヒョンデ・グループCCO)の作品として知られるが、こちらの2代目コナも、なかなかランボルギーニ的にアグレッシヴなスタイリングと映る。さらに“ロボコップ”のごときマスクなど、ちょっとヒロイックなカッコ良さには、否応なくテンションが上がってしまう。 一方インテリアは、同じヒョンデから先に日本導入されていたアイオニック5のようなデザイン・コンシャス感はなく、このクラスの小型クロスオーバーとしては至極真っ当な造形とフィニッシュ。また、西湘バイパスとターンパイク箱根(一部のみ)で体感したパフォーマンスも、このクラスのBEVとしては至極真っ当。必要にして充分なチカラを委ねてくれる。 あくまで個人的な嗜好ながら、500psを超えるような大出力EVがどうにも好きになれない筆者としては、今回乗り比べられたBYDドルフィンと同じく、ちょうど良い元気さという好印象が得られた。でも、本国には設定のあるICE版も試してみたい気も……。 ◆ボルボXC40リチャージ・アルティメット・シングル・モーター「ちょうど良い」 1980~90年代に一大ブームを起こした時代から、筆者がボルボのクルマづくりに感じてきたのは、絶妙の“ちょうど良さ”である。安全性へのこだわりは徹底追求する一方で、内外装の高級感や乗り味では、乗るものを過度に緊張させないユルさを感じさせる。 それはBEV版のXC40でも、大筋では変わってないだろう。電動モーターによる加速力を必要以上にアピールしてこないトルク設定も、前席・後席を問わず乗るものへの優しさのような思いを感じさせる。 天然資源保全のため、本革レザーを使用しない方針のもと採用された、ザックリとしたツイードのような生地のオシャレなシートに釣られてしまった気がしなくもないものの、ボルボに綿々と受け継がれている独特のカジュアル感やファミリー向けの多幸感は、たとえBEVになっても不変のものと感じられた。 やたら先鋭的なキャラクターを押し立てるのがデフォルトと化している感もある現時点のBEVの中にあって、家族や仲間と味わう元気、あるいは優しさを湛えるモデルって、実は貴重なのかもしれない。 文=武田 公実 (ENGINE2024年4月号)
ENGINE編集部
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