[ハリウッド・メディア通信] Z世代の男らしさ 映画『グラディエーターII 英雄を呼ぶ声』ポール・メスカルの魅力
リドリー監督が現代っ子に伝授したい作り手の情熱
記者会見では、監督に対してVFXの質問が殺到。監督は自らの幼少時代を語り、勉強は好きじゃなかったけれど、5、6歳のころから絵を描くことが好きで12歳で大きなキャンバスで絵画を描きはじめたと、自ら映画監督になるまでの過程を振り返る。そんなリドリー監督は7年間ロンドンのハートルプールというアートスクールで修行。映画の全シーンは頭の中で描かれていて、『グラディエーター』(2000)も、当初のストーリーボードは膨大。TASCHEN(ロサンゼルスの写真や絵画専門の本屋)で発売される予定の『エイリアン』のストーリーボードは「予算を4.2から8.4ミリオンドルに格上げさせるくらい映画スタジオは僕のビジョンを理解したんだ。それは私がこの眼で、この手で、絵を描くことを練習した成果なんだ。」と語る。VFXはあくまでも、フィジカルに撮影できない部分を補うためのもので『ブレードランナー』では一切VFXを使用していないという。今回の『グラディエーターII』のバトルシーンの中でも実際の経験からインスピレーションを得たのがマントヒヒと人間が戦うシーン。南アフリカを訪れた際、かわいいマントヒヒがいきなり18匹の集団で現れ、男が車に逃げ込もうとしたものの、その足を噛まれるなど執拗に攻撃された様子が脳裏から消えず、映画の中でもVFXと実写のコンビで、ヒヒのスーツをきたスタントマンたちが活躍している。監督は、最近の映画のファイトシーンでは、相手にパンチされても再び起き上がらないシーンが多いとコメント。「『ブラックホーク・ダウン』(2001)では19回パンチされて、ついに起き上がれなくて死を迎えるシーンがあるが、戦うとはそういうことだ。」「今の子供達、ティーン世代は辛抱できない。子供が木に登ったり、木から堕ちたり、堕ちて足を折ったり‥‥この映画で生きるということを体で体験して欲しい。このとんでもないスマホじゃなくてね。」と実際に手を使い、頭で考えながら、作り手となった87歳の巨匠の想いが手に取るように感じられる会見だった。
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