楽天 秋元氏「3DS全件通すとコストは売上の1.5%に」【 <セミナーダイジェスト>リスキトークスジャパン2024】
Riskified Japanは9月19日、ECの不正対策をテーマにしたカンファレンス「RiskiTalksJapan(リスキトークスジャパン)2024」を開催した。今回のセミナーダイジェストでは、楽天のコマース&マーケティングカンパニーで、危機管理不正対策部のジェネラルマネージャーを務める秋元智広カンパニーCCOに、楽天が考える不正対策について聞いたセッションをまとめた。モデレーターは、Riskified Japanの長谷川拓矢氏が務めた。 <不正放置で被害は売上の1.5%> 長谷川:3Dセキュア(以下3DS)に送信した注文が「中リスク」となり、チャレンジ認証を行うことによって 10~15%ぐらいかご落ちしてしまうということだが、詳しく教えてほしい。 秋元:仮に、2000億円くらいの流通がある企業を想定しよう。年間の取引は2000万件ぐらいあるとする。 不正をきっちり抑止できている場合、年間の不正利用金額は、チャージバックを含めて約1億円程度に抑えることが可能だ。売り上げに対して2000分の1ということになる。 ただ、カード決済の取引全てを3DSに通す仕組みを構築した場合、ドロップによる売り上げ損失や、3DSの利用料など、トータルで30億円近くマイナスになってしまう。 仮に、不正対策を全く行わなかったとしても、29億円程度は損失が増えることになるだろう。 有効な施策としては、3DSを通す前に不正検知ツールを使って、3DSにかける注文を著しく減らす方法だ。3DSを導入する前と比べて、チャージバックの金額もかなり抑えられるだろう。管理も楽になるはずだ。 <簡便なツール導入のリスク> 長谷川:不正対策ツールを導入する場合、どういったツールの導入が望ましいか。 秋元:いずれにしろ、場当たり的に不正対策ツールを導入するのは許されないだろう。 ある事業者では、3DS2.0を導入したところ、導入から6~7カ月後に、不正の発生金額が急激に増えていたことが分かった。 原因としては、3DSを真っ先に導入したことによって、不正な注文を分析する手段がなかったからだと考えている。 不正対策ツールの中には、「すぐに不正が抑制できる」「導入も簡単」とうたうものもある。そういったツールは、複雑な不正の判定ができないことが多い。 簡便なツールを「銀の弾」と誤解し導入しても、コストが増えるだけで不正抑止、売り上げ改善につながらない可能性が高い。 不正をゼロにすることは、カード決済を取り扱う上で、絶対にできないものだ。だからこそ、どう管理するかがとても重要だ。
「日本ネット経済新聞」記者 星野 耕介