「僕の現役最後の打席って誰も知らないでしょ?」イチローも初めて知る松井秀喜のラストシーン「縁がある、実はね」
イチロー、最後は古巣マリナーズに戻って引退
イチロー:僕の場合は、マイアミ(マーリンズ)の3年間が終わって、それこそジーターがオーナーになるタイミングで。(※イチローは2017年11月、マーリンズからフリーエージェントに。D.ジーターは2014年に引退後、17年オフにマーリンズのCEOに就任) 松井:あー、そうでした、そうでした。 イチロー:ちゃんと(ジーターが)球場まで直接、面と向かって「契約はもうここで来年からはない」ということを伝えてくれたんだよね。だから、それですごくすっきりしたし。まあ、次に進むしかない。そこで、オファーがあるかどうかわからないけれど、待つしかないんで。キャンプも始まって。3月に試合始まって・・・(オファー)なかったら、けじめつけないとなぁって思ってたの。 松井:(頷く) イチロー:そうすると、どのタイミングでそれ(引退)をするのか。シーズン始まってからじゃもう遅いし、例えば、いつも自主トレやってる神戸の球場で、何人かの記者さんに来てもらって話する。ひっそりとだよね、それって。そういう終わり方かもなって思ってたところに、マリナーズからオファーが来たんだよね。それでマリナーズに戻してもらった。僕から望んでトレードになった、当時とはもちろんGM違うけど。自ら志願して出て行った人間を、また戻してくれるんだ、って。それがすごく嬉しくて。どんな条件だって、もう関係ないじゃない。だから、チームが望むことは何でもしたいっていう気持ちもそのとき当然、これはもう裏切れないから。 松井:そうですね。 イチロー:だから、そんな中での2018年の練習だけの日々、まあ5月頭くらいの話なんだけど。でも翌年(2019年)には東京で2試合、(マリナーズの)開幕戦が決まっているし、そこに出るチャンスはある。これで終わりじゃないということは、口頭だったけれど、伝えてもらっていたんで。遠いけどそこからは。でも辞める理由もないから。練習はできるわけだし、それはいろいろ冷やかしはあったけれども、そういう耐性は僕なんか結構持ってるから、いろいろこうね、ごちゃごちゃ言われる耐性は。免疫力結構高いんで。だから練習だけの日々なんか、僕にとっては、全然苦じゃなかった。先があるからまだ。 松井:(頷く) イチロー:でも怖かったのは、周りは多分できないだろうと思ってる。5月頭から9月終わりまで練習だけの日々なんて。長く(現役を)やってきた人間ができるわけがないと、多分思ってるんじゃないか。なんかそういう圧は嫌だなって、怖いっていうか嫌だなって思ってたんだけど。それはそれで、試されてるっていうところもあるから、負けたくないし。それできたら、きっと何か将来の自分にとってもね、こんな経験、そんな経験なかなかできないからね。しんどかったけど、のちにいい経験になるかもなという思いもありながら、過ごした日々だったんだよね。だけど、やっぱブランクはね、当然長くて。ゲームはできないわけだから。2019年春キャンプスタートしたって、なかなか結果が出ない(※2019年オープン戦の打率.080)。年齢的なことも考えれば、当然周りはこれで(引退)っていうことも、普通といえば普通。 松井:うん。 イチロー:キャンプが終わって東京には行くんだけれど、その後はもうないということを伝えられたときに、じゃあ、別のチームを探るかって言われると、全くその選択肢はなかったの。 松井:うん。 イチロー:もうそのときが、僕の引退の決断をするときだって思ってたんで。それはもうすっきり。できるできないに関わらず。もうすっきり、じゃあもうここで僕は、他のチームの可能性を探るなんてことは、もう一度マリナーズを離れるっていう選択は僕の中にはなかった。 松井:逆に日本ていう選択肢もなかった? イチロー:全くなかった。