科学の教え、「もっと人に助けを求めよう」、助けを求めないのはむしろ「誰かの損」
助けたり助けられたりすると気分が良い理由
逆に、他者からの助けや社会的なつながりは、私たちの気分を良くする。心の健康のとりわけ重要な指標の1つは、利用するか否かにかかわらず、頼れる社会的なセーフティーネットワークを思い浮かべられるかどうかだということが研究から示唆される。 なぜなら、誰かに助けてもらうことで認知的な労力を軽くし、「ストレス要因をやりすごすための余地」を生み出せるからだと、米プリンストン大学情動ロジック研究室の博士研究員ラジア・サーヒ氏は説明する。 問題解決に至らなくても、人から支援や承認を受けることで、健康上の恩恵を受けられる。例えば、誰かに現状を打ち明けるだけでも、みずから状況を考え直して、心の痛みを和らげることができる、とスリ氏は言う。 2021年2月に学術誌「PLOS ONE」に発表されたサーヒ氏の研究によれば、困難な経験を振り返るときにパートナーの手を握っていると、感じる苦痛が小さくなったという。また、2010年7月に学術誌「PLOS MEDICINE」に発表された論文など、さまざまな研究により、社会的なつながりが長寿と関連していることが示唆されている。 例えば、多くの住民が90歳、100歳まで生きる「ブルーゾーン」と呼ばれる地域では、高齢者はしばしば強い共同体意識と生きがいを持っている。 その顕著な例が日本の沖縄で、人々は昔から「模合(もあい)」と呼ばれる緊密なグループを作ってきた。伝統的に、模合はメンバーにとって経済的なセーフティーネットであり、資源を共有する場だった。模合の風習は現在も盛んに行われていて、メンバーは定期的にお互いの無事を確認し合っている。 沖縄県長寿科学研究センターの広報担当であるクリスタル・バーネット氏は、メンバーとして模合に参加している。模合のコミュニティー構造は信頼関係を育み、メンバー間の頼みごとをしやすくしていると氏は言う。「空港まで車で送ってほしいときや、お金が必要なときには、メンバーに言えばいいのです」とバーネット氏。「頼まれた人は喜んで助けてくれます」