「学歴フィルター」の抜け道を探せ 就職に強い大学、見極めるポイントは?
「サイドドア」から入る方法も
それでも子どもの就活を心配する親に向けて、常見准教授は「就活は大学受験とは違います。大真面目に考えて正面突破する以外に、いくつものサイドドアがあるのです」とアドバイスします。 「大学のホームページで公開されている就職実績を見ると、この大学からこんな大企業に就職しているんだと驚くことがけっこうあります。偏差値は低くても、伝統的に地元の銀行に毎年採用があったり、大学と企業の間に採用面のつながりがあったりする場合もあります。もちろん、4年間の学びの中で実力をつけた結果、これまで採用実績のなかった大企業に採用されるケースも多いです。キャリアセンターで聞けば、そういう企業に就職した人はどういう学生だったのかの情報を教えてもらうこともできるでしょう」 新卒一括採用とともに、中途採用に力を入れる企業も増えています。新卒採用で噂される学歴フィルターは、中途採用でも使われることがあるのでしょうか。 「中途採用の場合、大学名よりも経験が重視されます。ですから20代は修業の時期と覚悟を決めて、新卒で入社した会社で専門性を身につけ、そこから次に進む方法もあります。そう考えると、大学名はささいなことと言えるかもしれません」
見極めるポイント
偏差値は低めだけれど就職に強い大学――そのような大学を選ぶ場合、見極めるコツはあるのでしょうか。「実はそれが難しい」と常見准教授は言いつつ、いくつかのポイントをあげます。 ① 全体の就職率より、業種別の割合を見る 「就職率99%」という数字は、あくまで就職したかどうかを表すものなので気にする必要はありません。「流通は30%だが、IT系は10%しかない」など、もう少し細かく見てみましょう。その傾向を大学ごとに比較すれば、自分の希望に合う大学が見えてきます。 ② 就職先の振れ幅は広いか 多くの大学では、ホームページや大学案内で具体的な就職先が紹介されています。「こういう企業に就職したい」と思える企業が入っているかを見てみましょう。業種など振れ幅の広さを感じさせる大学がおすすめです。 ③ 魅力的なキャリア教育があるか 就職に役立つ授業がどの程度用意されているかをホームページやオープンキャンパスなどで確認しましょう。就職対策のプログラムだけでなく、通常の授業でアクティブラーニングを徹底的に取り入れていることも、プレゼン力を鍛えるうえで大切です。 ④ キャリアセンターの支援体制を確認 エントリーシートの推敲や面接練習などを、丁寧にサポートしてくれるかどうかもチェックしておきましょう。大学によっては、4年間担当するキャリアカウンセラーがつくケースもあります。 そのうえで、常見准教授は高校生に次のようなメッセージを送ります。 「高校生と話していると、『〇〇大学に入れないと自分は認められない』『本当は文学が学びたいけれど、就職するためには経済や法律を学ぶほうがいい』などと自己暗示にかかっている人が少なくありません。でも、それは自分で自分を学歴フィルターに押し込んでいるようなものです。大学名や学部名よりも、『ここで4年間過ごせたら面白そうだ』と感じる大学を選んでください。たとえば東京都内の大学にも、緑豊かな多摩地区の大学もあれば、都心にある大学もあります。キャンパスが広くて学食がいくつもある大学もあれば、キャンパスは狭くてもすぐ近くに安い食堂やカフェや飲み屋がある大学もあります。あなたは大学時代の4年間をどこでどのように過ごしたいですか? それをきちんと考えて、魅力を感じる大学で自分を磨いてほしいです。その先にこそ、将来自分が進む道があると思います」
プロフィール
常見陽平(つねみ・ようへい)/千葉商科大学国際教養学部准教授、働き方評論家。1974年生まれ、北海道札幌市出身。一橋大学卒業後、リクルートに入社。バンダイに転職後、2010年に『くたばれ!就職氷河期 就活格差を乗り越えろ』で注目を集める。38歳で一橋大学大学院社会学研究科修士課程に入学し、14年に修了。フリーランスなどを経て現職。
朝日新聞Thinkキャンパス