「私を死刑に」指示役に憧れ老女死なせる ルフィ事件現場リーダー、改悛の情は本物か 法廷から
■「犯罪知識すごい」指示役に憧れ
SNS(交流サイト)で「闇バイト」と検索したのは、そんなときだ。バイトの内容は強盗などの犯罪行為だったが、「抵抗はなかった」と被告はいう。
「キム」と名乗る指示役の信頼を得て、現場のリーダーに。令和4年11月から3カ月間で、空き巣や強盗事件など6件の事件に関与した末、昨年1月20日に6件目の事件で見張りをしていた際、警察官から職務質問を受け、逮捕された。
「犯罪の知識がすごい」「格が上の犯罪者」。被告は、被告人質問で「キム」についてそう評し、「あこがれていた」と振り返った。
■「一生、謝罪」
逮捕された被告が感じたのは「絶望」だった。
当初は「5年くらいで出てこられる」と高をくくっていたというが、取り調べを受けるなどする中で、自身の犯した罪は無期懲役にあたる可能性が高いと知り「死んだほうがまし」と、死刑を望むようになった。
警察署から護送される際、報道陣に向かって中指を立てるしぐさをしたのも、死刑になるために心象を悪くしようとの気持ちからだったと、法廷で明かした。
だが、その後に出会った捜査員らが、被告を変えていったという。
警視庁の取調官からは「罪を憎んで人を憎まず」という言葉を教わり、検事から勧められた、犯罪者の家族の苦しみを描いた小説を読んだ。被害者や遺族の調書にも目を通した。
死刑を望む理由も、「死によって長期の刑務所生活を逃れるため」ではなく、「被害者に死をもって償うため」へと変わっていったという。
被告人質問で被告は「死刑でも償えないことをした」とも発言。「被害者に一生、謝罪します」と涙ながらに語り、最終意見陳述でも「極刑を下してください。心からお願いします」と念押しした。
検察側は「現場責任者だった被告の果たした役割は大きい」として無期懲役を求刑する一方、弁護側は「更生への目標を与えたほうがいい」と、有期刑を求めている。
被告が示した改悛の情。その真贋(しんがん)を、裁判員はどう判断するのか。判決は11月7日に言い渡される。(橘川玲奈)